明治期銅版画による商店紹介冊子の『東京商工博覧絵』から関連して、類似の
冊子の中から大阪神戸を紹介したものを見ていると、以前調べた竜吐水屋の名前を
見つけたので書き出しておきます (国立国会デジタルライブラリーより)。
浪花諸商独案内(明治12年)
阿波座戸屋町の井上利兵衛と天神橋一丁目の川村宇兵衛が載っています。
ただ「井上利右衛門」という名前は初めて見るものですが、利兵衛と同じ住所なので
親子か兄弟か同族と思われますが、わざわざ別々に掲載するというのは…?
川村宇兵衛は数年後にも広告を出していますが、名前や住所表記が少しずつ違うのは
竜吐水に残る焼き印の内容にも見られた状況です。
M12 龍吐水 川村宇兵衛 天神橋一丁目
M15 消防用水弾 喞筒型水弾 器械製作所 川村卯兵衛 大阪松屋町通釣鐘町南へ入
M18 非常器械製作所 川村卯兵衛 東区釣鐘町二丁目
商工技芸 浪華の魁(明治15年) 浪華商工技芸名所智掾(明治18年)
さらに、今までに見たことのない名前の喞筒(そくとう)製造所もありました。
商工技芸 浪華の魁(明治15年)
ポンプ製造所 戸田豊吉 御池橋東詰南入 〼組消防 喞筒製造所
浪華商工技芸名所智掾(明治18年)
金物類幷に喞筒製造処 西洋諸器械 守西正三郎 東区北久太郎町通り四丁目十一番地
諸器械喞筒製造所 松原喜治郎 大阪西区北堀江黒金橋一丁東
喞筒はポンプの事を指すのでポンプの組み込まれた機械いろいろを作っていたと
思いますが、消防ポンプはどのくらい作られていたのでしょうか。
御池橋や北堀江は井上利兵衛のある阿波座戸屋町にわりと近いところなので、
江戸時代のように似た業種が集まってくるという名残かもしれません。
また竜吐水はみつけられませんでしたが 住吉堺名所並に豪商案内記(明治16年)を見ると
鉄砲鍛冶や刃物屋があるのはもちろん、酒造家が結構多くておもしろかったです。
参考資料
図版|東京都立図書館 (tokyo.lg.jp)
銅版画からみた明治10年代後半の銀座の都市構造と建築/初田亨
明治期商家銅版画資料に関する歴史情報学的研究/菅原洋一
『明治の商店―開港・神戸のにぎわい』/大国正美編/神戸新聞総合出版センター(2017)
- 竜吐水調査に関連する調べ物の覚書 -
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