草双紙の中に竜吐水の挿絵を探しましたがほとんど見つからず、そのかわりに
いくつも見かけたのが、火事に備えて水を溜めておく用水桶 (天水桶)です。
国立国会図書館デジタルコレクションで見つけた中からいくつか紹介します
(主に1710年~1799年の草双紙より)。
「水溜」文字の大桶に木蓋と重しの石 藁で編んだようなものに見えるふた付
享保3(1718)「けいせい竈照君」3巻コマ7 明和8(1771)「絵本三家栄種」コマ19
今、用水桶と言ってイメージする形は、大桶の上に板を渡して手桶を積んであり
小さい屋根が架かっている、下の挿絵のようなものではないでしょうか。
安永9(1780)「山谷通伏猪の床」コマ17 文政9(1826)「情競傾城嵩」コマ17
小さい屋根には設置管理している町名や店名などが書かれています。
吉原(遊郭)の様子を描いたものによく出てきたように感じましたが、遊郭は
夜の町なので遅くまで多くの灯りが点いていたでしょうから当然の用心でしょうね。
なんともない町の風景に描かれたりもしますが、「山谷通伏猪の床」のように
用水桶の陰に身を隠して相手の様子をうかがうなど話のアクセントにもなってます。
「街能噂(ちまたのうわさ)」という江戸時代後期に書かれた江戸と大坂の風俗を
比較した本によると、水溜め部分が大きな木桶なのは江戸風で四角い石材なのが
上方風らしいです。
ちなみに西宮神社南門外側に今ある用水桶は昭和16年寄贈で、石材ではなく少し
キラキラしたコンクリートのような材質で、上部は10年ぐらい前に新しくしたと
思うのですが、手桶が積んであって檜皮葺のような小さな屋根が乗っています。
境内には文化8(1811)年の石材の四角い用水桶も残っています。
- 竜吐水調査に関連する調べ物の覚書 -
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