2月20日(水)の歴史講座「西宮の食習」を聴講した感想ご紹介します。
古くから「食習」に関する史料は少なく、中でも庶民の日々の食に関しては記録に
残らない場合が大多数です。
そのようななかで有効な手段のひとつが「現地での聞き取り調査」です。
今回は、聞き取り調査を中心に庶民の食・西宮の食習を探ってみたいと思います。
(講座案内チラシより抜粋)
たしかに庶民の日常の食事などは、今でもわざわざ書き残す事もないので
なかなか分かりませんが、仏事に関してはいくらかは記録が残っているそうです。
次いつあるか分からないし、前回はどうしたかなど確かめる必要もあるので
書き残されることが多いのでしょうね。
そんななかで、西宮市名塩の民俗を聞き取り調査した報告書に「からしそうめん」
という不思議なメニューがあったので調査していますという講座の内容でした。
まず他の出版物の中からも近畿の他の地域での葬式や法事などの仏事の時に
どんな料理を用意するかと調べると、いわゆる精進料理のような内容で高野豆腐や
白和えや煮しめなどが多く、麺類はほとんど出てこなかったそうです。
そこで名塩で昨年聞き取りをしたところ、報告書にあった「素麺をゆがき、アゲを
火にあぶってから薄く切り、こんにゃくをタヅナにしてからカラシ酢味噌で食べる」
とほぼ同じものや、具がなくてそうめんとカラシダレだけとか、または聞いたこともない
と言う人などいろいろだったそうです。
さらに名塩の周辺地域に聞き取り地域を広げると、生瀬では法事の時に酢味噌で
そうめんや冷麦を食べる、神戸市北区八多町では葬式で大鉢にそうめんのほか
ほうれんそうや焼いたあげや紅白の寒天を盛る、神戸市北区淡河町では葬式や
法事で食べるが好きな人は普段の食事でも食べる、など似たような料理が
つくられていたそうです。
結局のところ、今回の講座のまとめは「まだよく分かりません」でした。
近くの地域に似たような料理があることは分かりましたがその間の西宮市山口町
では作っていないというし、聞き取りをした人の宗派もばらばらだし、なぜそうめん
なのかなぜカラシなのかいつから作られたのかなど謎だらけだそうです。
ただ、こういう民俗学的なことは知ってる人がいるうちに記録にしておかないと
消えてなくなってしまうんだなあという調査の大変さはよく分かりました。