第6回西宮博物館・資料館連携講座 「摂津で活躍した江戸後期の画家たち」
2012年11月24日(土)を聴講した感想をご紹介します。
今回の講師は黒川古文化研究所の杉本欣久氏でした。
江戸時代の画家と言うと、どうしても幕府のある江戸と朝廷のある京都についてを
中心にいろいろな研究がなされているのですが、大坂についてはあまり詳しい研究が
されていないそうです。
そこで、個々の画家についてではなく大坂という土地柄から生まれた大坂の画家とは
どのようなものだったかという観点から解説していただきました。
まず、当時書かれた文書のいろいろを紹介していただきましたが、そのなかでも
大坂は俗っぽく、江戸は無骨で、京都は軟弱、という記述がなるほどと思いました。
海の近い大坂が秀吉以降江戸の初めごろまでに次々と水路を掘り海運の利便を図る
町になり、全国各地からの船が中之島の蔵屋敷に米を降ろすだけでなく、さまざまな
産物を降ろすようになり、そのなごりは今も一部地名に残っています。
さらに国内の産物だけでなく長崎に輸入される唐物も、幕府が窓口となって仕入れた
あと商人が入札で買ってからすべて大坂へ送って大坂で売買されていたそうです。
このように大坂の町にはありとあらゆるものが集まり、「天下の台所」ともいわれる
商売の町としての賑わいや雑多さが大坂人の気質を作っていったようです。
そんななか活躍した画家と言うのは、もちろん職業画家もいなくはないのでしょうが、
今回紹介されたのは商人や医者や蔵屋敷詰めの藩士など、実は他に本業を持っている
人たちが多かったということで、その人たちは今の本町あたりを中心とした船場と
よばれる地区に多く住まいしていたそうです。
今まで聴いた事のない画家たちの名前と作品をスライドで紹介されたのですが、
そのなかからキーワードとして次の二つを特にメモしました。
・「混沌詩社(こんとんししゃ)」 片山北海が主催した詩会の集まり
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B7%E6%B2%8C%E8%A9%A9%E7%A4%BE
・『日本山海名産図会』 木村蒹葭堂(けんかどう)の著・蔀(しとみ)関月の絵
http://record.museum.kyushu-u.ac.jp/meisan/top.html
『日本山海名産図会』は、「酒造り」「西宮の白魚」「摂州御影石」など見たことのある
ものだったので、大坂の人が作ったのかと新たな発見でした。
私なりにまとめると、活気ある町で好奇心を刺激された裕福な商人たちによる旦那衆の
余技的な成り立ちの画家が多く、分類などがむつかしく詳しい研究が進んでいない。
ただ、漢文(当時の外国語)を習得し、文章や絵画や工芸などにもその才能を開花させ、
家業を人に任せてまで打ち込む人もおり、作品として京都や江戸の画家と比べて決して
劣っているわけではない、と言うように理解しました。
今まであまり関心のなかったジャンルなのでちょっと難しかったですが、なじみのある
大坂のまちにかかわる話だったのでおもしろかったです。
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次回は 第7回西宮博物館・資料館連携講座 「相つぐ「銅鐸」発見の中で考古学は」
2012年12月12日(水) 13:30~15:00 西宮市立郷土資料館講座室 資料代500円