調査団 竜吐水班・野和魔獅子

竜吐水や用水桶などの消火道具で出来た怪しげな獅子舞?が目を引きます。
国立国会図書館デジタルコレクションより 『火水風災雑輯(1)』コマ12
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2592140
  

洒落や風刺のきいたような内容だと思うのですが、意味がよくわからないまま
とりあえず読んでみたものを以下に書いておきます。
読めなかった文字には〼で入力しています。
読みやすいように句読点を打ったり適度に行を整えています。
フリガナはあった方が分かりやすいと思ったところだけ( )で残しています。

【 野和魔獅子 】
此ノ度、世に珎(めづ) らしき野和魔獅子(やかましし) と云 怪獣出たり。
抑(そもそも) 獅子は其種類 最多(もっともおおし) 。
散財図会(さんざいづゑ) に委(くはし) く誌(しる) せり。
先(まづ)「王耶山(おおやさん) 」より出るを隠居獅子・苦累獅子(くるしし) 共いふ。
「ヨアキンド」より出るを天当獅子(てんとふしし) とも云・又 加鯰獅子(かなしし) 共云。
「バンヤ」の際(わき)「カザリツケ」〼 来(きた) るを合力獅子(かうりょくしし) といい
また馬伽羅獅子(ばからしし) と云。
「ヨバン」より渡るを勢ひ獅子(いきひしし) いい、又以也良獅子(いやらしし) と云。
「ヂメンモチ」より出るを忌々獅子(いまいましし) と云、又 長者獅子(てうじゃしし)と云。
「ゴホフビ」より渡るを宇曽良獅子(うそらしし) といふ、又 神楽獅子(かぐらしし)ともいう。
ただ「リウコシヤ」より出るは宇礼獅子(うれしし)といい、又 存財(ぞんざい)ともいふ。
此の野和魔獅子(やかましし) は大民(だいみん) 油断の産にして対馬の国に渡り、
夫(それ) より東都へ渡り駆廻(かけまは) る事は昼夜 休(やすむ) 時なし。
虎は嘯(うそぶい)て風を生ずと伝(つとふ) れども、この獣は風の烈(はげ) きに
随(したがつ) て 勢猛(いきおいはげしく) 砂煙をあげ、地響して爪音 喧(かまびす) く
鉄棒(かなぼふ) の如く尻尾逆立(しりをさかだち) て割竹の声あり、走処(はしるところ) に
児(こども) の夢を驚(おど) し、〼話(はなし) の腰を折。
其災(そのわさはい) 多しといへども元来 火防(ひぶせ) の獣にて、火難(くわなん)
少なきこと不思議なり。
願(ねがは) くは長く此獣を養育し置て火防となさんことを万民これのみ悦(よろこ)びぬ。
 于時火衛御年鼠年(ときにかゑいこねんねづみのとし)
    蛮人(ばんにん)     呉狗楼仙伴 録(ごくろうせんばん しるす)

【言葉遊びの内容を理解するためのメモ】
野和魔獅子 → やかましし。口やかましい人のこと?
散財図会 → 和漢三才図会 (江戸時代の百科事典) のパロディか?
王耶山 → 大家さん?
ヨアキンド → 夜の商売をしている人?
バンヤ → 自身番(町の自警組織)の詰所?
カザリツケ → ??
ヨバン → 自身番の夜の当番?
ヂメンモチ → 地面持ち? 土地を所有している地主?
ゴホフビ → 御褒美? 褒美が出るのはウソらしい?
リウコシヤ → 竜吐水屋? 火事などで竜吐水が売れてうれしい?
虎嘯風生 → すぐれた能力を持つ人が機会を得て奮起することのたとえ。
火衛御年鼠年 → 嘉永五年(1852)は子年

- 竜吐水調査に関連する調べ物の覚書 -


これは西宮歴史調査団公式ブログではなく、団員による個人的なブログです。
西宮歴史調査団についてのお問い合わせは西宮市立郷土資料館まで。
西宮市川添町15-26  tel:0798-33-1298  コロナ感染流行防止のため休館中

タイトルとURLをコピーしました