一年の半分が過ぎようとし、年に二度ある厄除行事である大祓(おおはらえ)の、
「夏越の祓(なごしのはらえ)」の時期となりました。
これは奈良時代からある神事だそうで、6月と12月の晦日(つごもり、最終日の事)に
行われると定められていて、ちなみに12月は「年越の祓(としこしのはらえ)」といいます。
この半年間に知らず知らずに犯した罪やけがれを除き、残りの半年を無事に過ごせるようにと
祈願する行事です。
(以下の写真はここ数年の各神社での夏越の祓いの様子を取り混ぜて使用しています)
神社でお祓いを受ける場合の主な行事は次の二つになるのではないでしょうか。
一つは、「形代(かたしろ)」
形代とか人形(ひとがた)とよばれる人の形に切った紙で、体をなでて悪いところを移したり
息を三度吹きかけて厄を移したりしたものを奉納して身を清めるものです。
また切り幣(きりぬさ)という小さく切った紙や麻を体にかけて清めることもします。
もう一つは、「茅の輪(ちのわ)くぐり」
茅(かや)で作られた大きな輪をくぐることで厄を落とし無病息災を祈ることで無事に暑い夏を
越そうと言うものです。
「水無月の夏越の祓いする人は千歳の命延ぶといふなり」(『拾遺和歌集』詠み人知らず)の
古歌を唱えながら、左まわり・右まわり・左まわりと8の字を書くように三度くぐり抜けるというのが
一般的におこなわれている作法のようです。
2009年越木岩神社茅の輪くぐり 動画
2010年西宮神社茅の輪くぐり 動画
この神事は『備後国風土記』の故事に由来するといわれます。
素盞鳴尊(すさのをのみこと)が旅の途中で日が暮れ、ある村で一晩の宿を求めた。
薄汚い旅姿を見て、裕福な弟の巨旦将来(こたんしょうらい)の家では泊めるのを断ったが、
貧しい兄の蘇民将来(そみんしょうらい)の家は快く泊めて精一杯もてなした。
その後何年かたって、素盞鳴尊が再び訪れ、蘇民将来の家族に茅で作った小さな輪を与え、
「腰につけていれば疫病を避けることが出来、家族が末永く栄える」とおしえ、後に疫病が
流行った時に蘇民将来の家族は無事だった、とされる。
このことから、「蘇民将来」と書いた紙を門にはっておくと災いを免れるという信仰も生まれ、
茅の輪も、最初は身につけることのできる小さなものだったが次第に大きく作られるようになり、
これをくぐって罪やけがれを除くようになったようです。
この夏越の祓に京都では「水無月(みなづき)」という和菓子を食べる習慣がありますが、
上部に乗っている小豆は悪霊ばらいの意味があり、ういろうで作られた三角の形は、
氷室の中から取り出された氷の形を模しているという厄除けの和菓子だそうです。
(西宮流記事「四季折々の西宮」2008年6月の記事をもとに一部書き直しています)
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