酒が醸す町づくり

白鹿記念酒造博物館で開催の、阪神沿線7館合同企画展 阪神沿線の文化110年
『酒が釀す町づくり -西宮の近代化-』展へ行ってきました。
これは阪神電鉄開通110年を記念して、阪神間の尼崎-西宮-芦屋-神戸の博物館や
美術館がそれぞれの特徴を生かした企画展をするもののひとつで、白鹿では
酒造りの近代化と西宮の近代化への貢献をテーマにした展示となりました。

(展示室内は撮影禁止ですので許可をいただき撮影しています)
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まずメインは昭和5(1930)年に完成した近代的な工場「白鹿館」についての紹介で、
江戸時代以来酒を運ぶのには樽が使われていましたが大正から昭和にかけては
びんを用いることが広まり、そのために作られた瓶詰・醸造の工場が白鹿館です。
鉄筋コンクリート製でアーチ形の屋根、製氷装置を備えた最新式の工場は全国各地の
顧客を招待しての見学会が行われていたそうです。

また日本酒は製造工程として、殺菌したり酵素の働きを止めたりして品質を整える
火入れ(加熱)が欠かせませんが、製法の研究や冷凍設備によって火入れしていない
生酒(なまざけ)を夏でも製造販売できるようになったのだそうです。

展示の中には工場内の製氷機の写真や販売用の生酒のパンフレットがありますが、
そのパンフレットには「冷凍装置蔵白鹿館で、苦心研究の結果創醸したもの」、
「美味と清涼と保健をかねた銷夏(しょうか・暑さをしのぐ)第一等の飲物」、
「近頃保健剤として盛に提唱せられて居ります酵母がその儘多数に生存して居り」、
「美味爽快シャンペンにまさる」、「井戸水又は冷蔵庫で冷やして、氷塊或は炭酸水で
割って(中略)さわやかな香味又格別」などなどとても力を入れていた感じが伝わります。

会場にいた学芸員さんに聞くと、江戸時代以来日本酒は燗をして飲むのが一般的で
夏でも燗で飲むのもあたりまえだったそうで、夏に飲む冷たくさわやかな日本酒は
とてもすごい画期的なものだったようです。
ただ一般家庭に冷蔵庫が普及していなかったため、しばらくして製造を休止せざるを
得なかったそうです。

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酒蔵そのものの近代化のほかにも、宮水を汲み上げることにより周辺地域の
井戸の水が足りなくなるので上水道を作るための資金を寄付したり(大正10年)、
西宮市役所庁舎と西宮市立図書館の建設資金を辰馬吉左衛門が寄付したり
(昭和3年)と、西宮の酒造家が西宮市の近代化にも大きくかかわっていることが
紹介されています。
また、辰馬吉左衛門は西宮でマッチの製造もしていたそうで、本業の酒造業だけで
なくいろいろな事業を手掛けていたと知って驚きました。

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会場の中央には金属製の(辰)の看板があって、これは今はショッピングセンターや
マンションになっている場所にあった白鹿館の正門にあったものだそうで、以前
建物を見たことありますが直径が1mほどもある大きなものでびっくりしました。

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他にも旧西宮市立図書館の新築披露の様子の映像があって、当時の図書館の様子は
もちろん、周りの町の様子(おそらく本町通りか)や蒸気機関車や路面電車が写って
いるのも面白かったです。

この展示の期間中は記念館は休館で酒蔵館の小ホールでの展示となりますが、
来館者にはおなじみの記念品がもらえるので、とってもお得ですよ。
また、西宮市大谷記念美術館と西宮市立郷土資料館の3館を回るスタンプラリー
開催中ですし、子供たちの夏休みの自由研究にもいいかもしれませんね。

 

阪神沿線7館合同企画展 阪神沿線の文化110年
『酒が釀す町づくり -西宮の近代化-』
2015年7月8日(水)~8月24日(月)  ※8月17日(月)~19日(水)は夏期休館日
※酒蔵館のみでの開催につき、入館料:一般200円、中・小生100円

8月1日(土)14時~ リレートーク「西宮モダニズム」
.         (大谷美術館にて3館学芸員によるリレートーク)
8月8日(土)14時~ ミュージアムトーク(学芸員による展示品解説)

 

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