戦国史研究と家譜資料 -黒田孝高と「黒田家譜」-

第27回西宮市内博物館等連携講座
「戦国史研究と家譜資料 -黒田孝高と「黒田家譜」-」
2015年3月4日(水)を聴講した感想をご紹介します。

まず、黒田孝高とは黒田官兵衛のことで、「黒田家譜」とは官兵衛と
その息子で福岡藩初代藩主長政の業績を三代目藩主がまとめさせたものです。

昨年の大河ドラマでも出てきた有名なエピソードなどはだいたいがこの
「黒田家譜」に載っているものだそうですが、そういう出来事が本当にあった
ことなのかどうかを考える「史料批判」という研究方法について、講師の
大手前大学史学研究所の小林基伸さんからいろいろ教わりました。

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歴史に関する情報については、その出来事のあった時代に書かれた文書や
日記などの一次史料と、後の世に編纂された二次史料とに分けられるそうで、
一般的に一次史料の方が信頼がおけるとされています。
というのも、二次史料は後世の人が何らかの意図をもって編集するので、
編集者に都合のよいことだけ集めて残すということがおこりやすいからです。

もちろん編集者の勘違いや単純に間違えて書いてしまうこともあり得ますが、
「黒田家譜」に書かれていることを同時代の公家や武士や寺社の日記などで
調べると、年代が違っていたり、ほかの一次史料と内容が違っていたり、
出典史料が不明で他に見当たらなかったり、官兵衛の活躍を目立たせるために
いいとこどりをしたと思われる節が多々見つかり、「黒田家譜」の歴史史料と
しての信頼性はあまり高くないように思われるそうです。

確かに、本能寺の変の後で秀吉に「天下取りの好機です」と言ったり、
関ヶ原の合戦で長政に「その時左手は何をしていた」と言ったり、など、
話としてはおもしろいですが、出来過ぎな感じもありますよね。

もちろん一次史料といわれるものでも100%信用できるというものでも
ありませんが、どの史料はどの程度信用できるものなのかを評価する力が
大切で必要ですというお話は、大学の講義で歴史研究の基本を教わって
いるような気分になりました。

葉室麟の小説『蜩ノ記』のなかで家譜編纂をしている様子を思い出したり、
最近でいうとネットに出回る情報や写真が信頼がおけるものかどうかなど、
「鵜呑みにせず、一度は疑ってみる(出典を確認する)」ということは、
これからも歴史の勉強をしていくうえで大事なことなのだなと思いました。

 

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次回は第28回西宮市内博物館等連携講座  「文化財の三次元計測」 
2015.3.18.(水) 13:30~15:00 講師:岡本篤志(大手前大学史学研究所)

 

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