笹部新太郎氏は「櫻男」「桜博士」とも呼ばれ、91年にわたる生涯を桜に捧げた人。
全国各地でさくらを蘇らせたことでも有名だ。
ここでは笹部慎太郎氏の全般的な紹介というより、主に西宮市との関係を中心にまとめた。
笹部新太郎氏と西宮の関わり
『櫻男行状(さくらおとこぎょうじょう)』(昭和33年 平凡社発 。平成2年に双流社より新訂増補版が刊行)という自伝も執筆しており、その中には、父親から言われた「この世に生を享けた甲斐」という言葉を桜の研究に求め、生涯を桜に費やしたことも書かれている。
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笹部氏は「ソメイヨシノ」より、日本固有の山桜や里桜を好んでいたと言われ、その保護・育成に人生を捧げ、全国各地でさくらを蘇らせたことで知られる。
『櫻男行状(さくらおとこぎょうじょう)』がきっかけで、作家の水上勉氏が笹部氏をモデルに「櫻守(さくらもり)」>>という小説を書き、その中では武田尾・武庫川・旧福知山線など西宮の風景も出てくる。
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笹部氏が演習林とした亦楽山荘(桜の園)は宝塚市になるが、その演習林の横には武庫川が流れており、西宮市がハイキングコースとしている生瀬駅から名塩駅までの間の旧福知山線のハイキングコースからは、その亦楽山荘(桜の園)あたりの山桜が綺麗に見える。(関連記事は下記より)
また、当時西宮市の水道局に勤務されていた南野三郎 (のちに同市の助役)と親交があったことで、越水浄水場や甲山の桜の植樹や管理指導などにも関わった。
夙川の桜については「松並木あっての桜だ!」として、戦前から夙川を守ってきた松林の美しさを讃えていたという。(夙川の桜は、戦後に植えられ整備された。戦前は松並木の夙川だった。)
越水浄水場の桜との関わり
越水浄水場の桜にはとても力を入れられたようで、1924年(大正13年)にできた浄水場の30周年の時には、山桜や里桜などの苗木260本余りが武田尾の笹部氏の演習林(亦楽山荘)および京都府向日町の苗圃などから移された。
(今でも、約120本の様々な種類の桜が楽しめる場所となっており、春の桜の時期には通り抜けができる。)
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越水浄水場についての詳細は、下記の記事をご覧下さい。
笹部新太郎氏が愛した桜の話
日本固有の山桜や里桜を好んでいた笹部氏が一番好きな桜はJR紀伊富田駅(和歌山県)近くの紀州権現平桜であったと言われているが、戦時中に伐採されてしまったという。
その後たまたま残存していた種子が西宮市に寄贈され、西宮の植物生産研究センターのバイオテクノロジーで増殖させ、今は「西宮権現平桜」>>と名付けられ西宮のオリジナル桜として市内の公園や街路などに植えられている。
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西宮権現平桜についての詳細は下記の記事から!
また笹部新太郎の旧居(現神戸市岡本南公園)に残され、「笹部桜」と名付けられた桜は、カスミザクラにオオシマザクラ系の里桜が交雑したものと推定されている。
北山緑化植物園にも「笹部桜」の大きな木がある。
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西宮のオリジナル植物(オリジナル桜を含む)に関してはこちらのページで➡︎
笹部新太郎氏が所蔵していた資料が白鹿記念酒造博物館に保管
生涯を桜に捧げた笹部新太郎氏の所蔵していた桜に関するコレクションは資料、文献、美術工芸品など約5000点にのぼり、西宮市に寄贈された。
今は白鹿記念酒造博物館>>で保管され、年間を通じて「笹部さくら資料室」として常設でコレクションを紹介しているほか、毎年春には記念館全室を使用した特別展示なども行われている。
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資料の中には、昭和3年から始まった細かい字で丁寧に書き込まれた自筆の手帳・ノートを合わせると50 冊以上にものぼる記録も含まれている。
笹部さんの几帳面さを物語るだけでなく、亦楽山荘での里桜の育成に賭けた熱量が伝わってくる記録になっている。