この記事は、私たちが「涼宮ハルヒ」シリーズ作品を応援してきたいろんな活動を振り返ってみたものです。
私たち、地域情報ウェブメディア・西宮流 (にしのみやスタイル) は、「涼宮ハルヒの憂鬱」を応援したくて、これまでイベントを行ったり、記事でも何度もご紹介してきました。
初めてのファンイベント「SOS団 in 西宮に集合よ!」から11年。長い間ハルヒとハルヒファンを眺めてきた西宮流ですが、その時々に様々なドラマがあり、振り返ってみたところなんとも心の琴線に触れる記録ができました。
当時をご存知のファンの方には懐かしいかもしれません。最近涼宮ハルヒファンになった方や「涼宮ハルヒは読んだことない」という西宮市民の方にも「そんなことがあったのか〜」と興味を満たしていただけば幸いです。
「涼宮ハルヒの憂鬱」とは
ご存知ない方にあらためて説明しましょう。「涼宮ハルヒの憂鬱」は角川スニーカー文庫(角川書店)から2003年6月に出版されたライトノベルです。作者は谷川流さん、イラストはいとうのいぢさん。また現在11タイトルある小説に加えて、スピンオフ、アニメ、漫画など多くの関連作品があります。
作者の谷川流さんは西宮市の出身で、「涼宮ハルヒ」シリーズには西宮の風景を想像させる地名やシーンが多く登場することで有名です。2023年現在、「涼宮ハルヒ」シリーズはまだ完結していません。
(アニメ化された時には、まさに西宮の風景がそのまま描写されました。)
「涼宮ハルヒ」シリーズは出版から今年 (この記事公開時点) で20年が経ちます。しかし、10代、20代のファンは今も増えているようです。西宮市民の方からも「ラノベとかあまり興味なかったけど、読んでみたらハマってしまった」なんてお声を聞くこともあります。世代を超えて愛されて続けている作品といえるでしょう。
なぜ西宮流がハルヒに注目するようになったのか
そもそも西宮は、村上春樹や谷崎潤一郎などこの地に関わりの深い有名作家が多く、西宮が舞台として登場する文学作品も多かったのです。
2009年、西宮市の取り組みとして、西宮が登場する文学作品を紹介するウェブサイト「西宮文学回廊」が作られました。その制作・運営の実働をになったのが私たち西宮流でした。
そんな私たちが、涼宮ハルヒシリーズを放っておくわけがありません。西宮の街角で本当にハルヒたちが遊んでいるかのように、西宮の風景がいきいきと描かれているのです。地元西宮のウェブメディアとして、西宮のハルヒの聖地巡りを盛り上げられたらいいな、ハルヒファンの皆さんと一緒に私たちも楽しめたらいいな、という思いが高まっていったのです。
2012年 イベント「SOS団 in 西宮に集合よ!」
西宮流が企画した涼宮ハルヒのファンイベント「SOS団 in 西宮に集合よ!」は、2012年、西宮市の観光プロジェクト「西宮まちたび博」のプログラムのひとつとして開催されました。
イベント開催の経緯
当時すでに西宮には、「涼宮ハルヒ」ファンが遠方からも多く訪れていました。ですが、私たちはハルヒファンの皆さんとの接点が特にない。他の自治体でやっているようなコンテンツツーリズムへのテコ入れも、西宮市は特に行ってはいない。
西宮にこだわって情報発信をしてきた西宮流としては、ハルヒファンの皆さんに「ようこそ西宮へ!」と歓迎の言葉を伝えたいな、という思いがずっとありました。
そうした折に「西宮まちたび博」が実施されることになり、イベントの企画を練ったのです。
ハルヒたちの歩いた街の魅力を、地元ウェブメディアだからこそ紹介できる面があるのでは? アニメやラノベに関心のない西宮市民の皆様にも、ハルヒの魅力を伝えたい! そんな私たちの熱い思いを角川(KADOKAWA)様が受け止めてくださり、実現にこぎつけたのが「SOS団 in 西宮に集合よ!」でした。
イベントの内容
イベントは西宮北口のアクタ西宮のオープンスペースで行われ、多くのハルヒファンが訪れました。
イベントでは、西宮の回遊マップに掲載されたお店で購入 (サービスを利用) すれば、オリジナル栞がもらえる「栞ラリー」、西宮の写真展、サブカルを研究する学生によるハルヒ研究発表など、様々な企画を行いました。
イベントに際して涼宮ハルヒシリーズの作者、谷川流さんから大変に素敵なメッセージをいただいたり、ハルヒファンの皆様の熱い思いに触れたりと、西宮流編集部にとって大変に深い感慨を残しました。
このときのハルヒ&有希&みくるのレースクィーン姿のパネルは、現在はららぽーと甲子園2Fのクリエートにしのみや (西宮流事務所) にあります。また「SOS団 in 西宮に集合よ!」の思い出は、サブサイト「SOS団 in 西宮に集合よ!」に残っています。
» 2012イベントmemorial | SOS団in西宮に集合よ
北口公園のハルヒ時計 撤去と復活
「SOS団 in 西宮に集合よ!」の前年、あの「ハルヒ時計」が撤去されていました。ハルヒファンにとっての一種のアイコンであった西宮北口駅前公園 (現・にしきた公園) の時計塔は、その数年後、ファンの熱い思いによって復活を遂げることになります。そこにも西宮流がかかわっています。
時計塔の撤去
阪急西宮北口駅北西側にある北口駅前公園は、「涼宮ハルヒの憂鬱」小説シリーズの中でSOS団の集合場所として度々登場します。アニメ化された際も、ファンの間で語り草になった回「エンドレスエイト」に時計塔はほぼそのままの姿で繰り返し登場しました。
独特なデザインの緑色の時計塔は印象的で、遠方から聖地巡礼で訪れたファンも必ず立ち寄る場所でした。1993年の公園整備の際に西北商店街が寄贈したものです。
ところが2011年の公園の改装工事で、不要として撤去・廃棄を決め、時計塔は撤去されます。
撤去工事の様子は、ハルヒファンのきーぼーさんが動画にまとめています。
時計塔復活へ向けての動き
「あの時計塔が撤去された?!」とファンの間には驚きと悲しみが広がりましたが、撤去された時計塔は解体を行った業者の敷地に保管されていることがわかりました。
2012年に行われたイベント「ハルヒサマーフェス」(関西新文化振興会、関西コンテンツツーリズム研究会) では、会場に時計塔が2日間設置され、ファンはその無事を喜んだのでした。
その翌年、あの時計塔をまた西北駅前公園に戻すのはどうか、と提案したのは、西宮流編集長・岡本でした。
2013年5月1日、西宮流(にしのみやスタイル)の岡本さんに珈琲屋ドリームに呼ばれ、ハルヒファンの熱意もあり、あの時計を再び元の公園に戻すのはどうかという構想を打ち明けられました。もちろん大賛成!現在の所在地、所有者の詳細を教えました。
岡本さんが行政の担当部署や商店街にハルヒファンの思いを伝え、今回の復活に繋がりました。
引用元: ハルヒファンの思いに応え、SOS団集合場所・北口駅前公園の時計塔が復活決定!【動画あり】 – きーぼー堂
そしてついに2014年、時計塔は復活します。西宮北口公園 (現・にしきた公園) で行われたにしきた商店街のイベント「にしきた・ゆっくり祭り」で、復帰工事を終えたハルヒ時計のお披露目セレモニーが行われました。
» ハルヒ時計の下で、にしきた・ゆっくり祭り 4月12日(土)開催 – 西宮流 (にしのみやスタイル)
時計塔のデザイナーさんから連絡があった
この復活のお祭りより少し前のある日、西宮流に電話がありました。電話の主はなんと、あのハルヒ時計をデザインしたクリエイティブ・ディレクター山下雅章さんでした。
山下さんは当時涼宮ハルヒのことはご存知なかったそうですが、時計塔の修理についてメーカーから問い合わせがあり、この復活劇を知ったそうです。
数々のモニュメント制作を手掛けてきた山下さんですが、このように一度撤去されたものが復活するというのは聞いたことがない、と語っています。この時のインタビューをまとめた記事はこちら。
2015年「長門有希ちゃんの消失」エンドロールに西宮流の名前が & 文芸部活動
涼宮ハルヒシリーズのスピンオフ漫画が原作のアニメ「長門有希ちゃんの消失」が2015年にテレビ放送されました。この制作において、アニメの背景に西宮の風景が描かれるということで、西宮市観光振興課や西宮流がロケハンに協力。アニメのエンドロールに西宮流の名前が流れることになりました。
そして2015年4月には、廣田神社の境内で行われたつつじまつり青空市で、西宮のPRブースで「長門有希ちゃんの消失」の放映を記念して、オリジナルポスター公式の展示や、缶バッチのガチャガチャによる販売などを行いました。
» 4/12(日)アニメ『長門有希ちゃんの消失』放映記念ブース – 西宮流 (にしのみやスタイル)
このときの情報は、長門有希ちゃんの部活にちなんだ名前のサブサイト・西宮流文芸部でもお伝えしていました。
2018年 西宮が「ハルヒの聖地」として認定される
アニメツーリズム協会の「訪れてみたい 日本のアニメ聖地88」の2018年版で、西宮市は「長門有希ちゃんの消失」の聖地に選定されました。続く2019年版では「涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ」でも選定されました。
これにより、ようやく「西宮は涼宮ハルヒの聖地」といえるようになったのです。これ以前も多くのハルヒファンが西宮を訪れてくださり、私たちもイベントを実行してもきましたが、当時は「ハルヒの聖地」という言い方はしませんでした (というより、できなかった)。
2019年7月5日に正式にアニメツーリズム協会から西宮市へ聖地認定プレートと御朱印が授与されました。プレートはあの時計塔のある公園にほど近い野村証券のショーウィンドーに、ご朱印はハルヒファンに愛される珈琲屋ドリームに設置されています。
(野村証券の移転により、プレートは西宮市都市ブランド発信課で保管されたのち、2024年3月からは、アクタ西宮にある北口図書館で展示されている。)
» 【告知第5弾】『訪れてみたい 日本のアニメ聖地88』認定証受賞式 – 西宮流 (にしのみやスタイル)
2019年「SOS団 in 西宮に集合よ! オーバー♪」
ようやく「涼宮ハルヒの聖地・西宮」を名乗れるようになった2019年、アニメの聖地巡りを主題としたファンイベント「SOS団 in 西宮に集合よ! オーバー♪」を行いました (兵田印刷工芸株式会社と共同)。
涼宮ハルヒシリーズの聖地マップ、スタンプラリー、ARスマホアプリなどが制作され、2012年より少しグレードアップしたイベントに、また多くのハルヒファンの方々が訪れてくださいました。
西宮流が事務所を置くクリエートにしのみやはスタンプラリーの最終地点になりました。ハルヒファンの交流に役立てたらと願って、誰でも書きこめる雑記帳や、「どこから来ましたか?」シールパネルなども用意してみました。
» 【告知第6弾】スタートだよ(^_−)−☆『SOS団 in西宮に集合よ!オーバー♪』 – 西宮流 (にしのみやスタイル)
このイベントを開催期間中、ショッキングなできごとがありました。京都アニメーションの事件です。
そのことでこのイベントがクローズアップされることに私たちにも複雑な気持ちがありましたが、このつらい時こそファンと交流しながら京都アニメーションへのエールを送りたいと考え、イベントは予定通り続行しました。
設置していた雑記帳にはあの事件以後、京アニへの思いやエールなどが書き綴られていました。
募金箱も設置しました。ハルヒファンの方々からのご協力はもちろんのこと、今回の事件で西宮とハルヒのかかわりを初めて知った西宮市民の方がわざわざ足を運んで募金をしてくださる場面もありました。
※募金活動は終了しています。
2021年 西宮風景箱 ハルヒバージョン発売
「西宮風景箱」は、西宮流のオリジナル商品で、西宮の風景をモチーフにしたダンボールクラフト。その8つめのラインナップとして「涼宮ハルヒ」バージョンを作りました。公式の涼宮ハルヒの画像をレーザーカッターの繊細な彫刻線画で表現し、8枚の限られた色を組み合わせて世界観を作りました。
このデザインを手掛けたのはなんと、先ほどもご紹介したクリエイティブディレクターの山下雅章さん。西宮北口駅の公園に立つあの時計台のデザインをされた方です。発売当初は大きな反響を呼び、手作業の製作が追いつかなかったことも。
» 西宮風景箱ver8~SOS団の集合場所~絶賛販売中!! – 西宮流 (にしのみやスタイル)
2022〜2023年 ドリパスチャレンジ
ユーザーからのリクエストに応じて映画上映イベントを開催するサービス「ドリパス」を利用して、西宮にまつわる映画を西宮で上映できないか……というチャレンジを、西宮流編集長主導でいくつか行ってきました。
そのチャレンジのひとつ、アニメ「涼宮ハルヒの消失」の上映が2023年6月、ガーデンズのTOHOシネマズ西宮で実現しました。
本当は「消失」の12月 (作中の12月18日に重要なできごとが起こるシーンがある) にできれば嬉しかったのですが、それには間に合わず。しかし、遠くからも集まった涼宮ハルヒのファン達と特別な思いを共有でき、素晴らしい上映会になりました。
それにしても、映画の中に出てくる風景、あそこも・ここもいろいろ消失してますね。
街は、こうしてどんどん変わっていきます。
2023年12月21日。
兵庫県教育委員会は、県立西宮北高校と県立西宮甲山高校が合併する新しい校名を『西宮苦楽園高校』と発表しました。
2025年3月末で、北高の名前も消失することになりますね。
» ドリパスで上映実現!西宮の風景満載のアニメ『涼宮ハルヒの消失』 – 西宮流 (にしのみやスタイル)
クリエートにしのみやのこと
西宮流が現在事務所を置いている、ららぽーと甲子園内の施設「クリエートにしのみや」には、今も涼宮ハルヒファンの方が訪れます。
今やハルヒファンの中には、「涼宮ハルヒの憂鬱」初刊のころまだ物心つく前だったのでは? と思しき若い方もいれば、海外から来られる方もいます。「涼宮ハルヒ」は世代と国境を超えて愛される大きな作品になんだな、と実感します。
地元・西宮の皆様にもぜひ知ってほしいですね。こんなふうに、遠方からもわざわざ西宮を (しかもららぽーと甲子園の通路の奥にある小さな施設をも) 訪ねてこられる方がいるということを。西宮は実はこんな形で愛されていたりするのです。
» [西宮ペディア] クリエートにしのみや – 西宮流 (にしのみやスタイル)
西宮流はこれからもハルヒとハルヒファンを応援します!
「涼宮ハルヒ」の新作が制作中、との話が聞こえてきています。ハルヒをまだ読んだことがない方も、今からでも遅くないので、来年あたりもしかしたら起こるかもしれない第何次目かのハルヒブームに、ぜひ乗っかってみてほしいと思います。
現在発売中の小説作品リストはこちら。