『白砂青松』・・・この言葉が昔の西宮の沿岸の美しさを表す言葉だったが、特に鳴尾地域には黒松が多かったという。
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今の西宮神社の境内に砂地と共に黒松の林があるが、これは往時の海浜の面影を伝えていると言われている。
ここの松も、明治末期ごろには巨松があったようだが自然災害や松くい虫の影響でなくなっている。
えべっさんの御神影札には、釣竿を持って鯛を釣るえべっさんの後ろに松が描かれている。
これは、海岸の常緑の木に神様が降臨されることの象徴。えべっさんと松、神様と松は切っても切り離せないものなのだろう。
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古い時代の絵地図などを見ると、川や海沿いに松林があったことが窺える。
そんな中でも、鳴尾は著名な歌人たちが歌にするほどの松の名所だった。
多くの歌人にも謳われ、この沖を通る船からも目を引いたと言われる『鳴尾の一本松』があった。
しかしたくさんあった黒松もだんだん少なくなり、今では武庫川の河川敷に名残をとどめているが、それも少なくなってきている。
そんな貴重な黒松を残そうと阪神南地域ビジョン委員会の『自然と共生するまちづくりグループ』と『緑豊かで安全な街づくりグループ』が2012年から活動している。
尼崎21世紀の森公園での植樹なども予定されている中、2019年2月には西宮神社の境内の中にも、鳴尾の黒松の遺伝子のある苗が植樹された。
この時の記事はこちら>>
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鳴尾村誌の中では12ページにわたって、鳴尾の一本松>>や黒松のことが取り上げられているが、西宮市の景観樹林保護地区にも指定されている鳴尾八幡神社の境内にも黒松が多い。
ところで、樹齢の古い松の根元に近いところで、樹皮が剥がれて凹んでいるようなものは、第二世界大戦時に松の樹液から作る「松根油」(しょうこんゆ)が航空機の代用燃料として使われた名残り。
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武庫川学院創立80周年を記念して、クロマツ2本が中央キャンパスの噴水南側に植樹されたという。