古い街並みが残るエリアには御影石の石垣によく出会う。
西宮市内でも、あちこちでそんな御影石の石垣に出会うが、甲東園付近は多いような気がする。
以前、武庫川女子大の三宅正弘先生から「西宮の御影石は桜が詰まったピンクの御影石!」という夢のあるお話をお聞きしたこともある。
今回は、そんな御影石のお話を・・・・。
まずは『御影石(みかげいし)』って?
御影石とは石材としての呼び名で、鉱物的には『花崗岩(かこうがん)』となる。
その産地によって、含有鉱物の種類や比率が様々に異なり、含まれる有色鉱物の名前や鉱物粒子の大きさなどによって、さらに分類もされるようだ。
御影石を調べてみると、日本では色目は基本的にはグレー系が多いが、ピンクや朱色のような石もあると書かれている。
地球上ではごくありふれた存在の花崗岩は、日本でもあちこちにあり、茨城県日立市のカンブリア紀の物が最も古いそうだ。
日本では、阿武隈高地、関東北部、飛騨山脈、木曽山脈、美濃高原、近畿地方中部、瀬戸内海から中国山地、北九州など広く分布している。
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花崗岩が「御影石」という石材名になったのは、大きな集積場であった神戸市東灘区の「御影」港から船で日本各地へと輸送されたことから名前がついた。
そこから運ばれ、京都や大阪の灯籠や石柱などにも利用される良質な石材として日本で有名になった。
六甲山でとれる御影石は「本御影」と呼んで区別されていたが、1956年に六甲山が瀬戸内海国立公園に編入されて以来、採石は停止された。
御影石は表面を研磨すると大理石と並ぶツヤがあり、墓石としても多く使われてきた。
また、建物の内外装にも多く使われている。
阪神間が「白砂青松」と言われるのは、この辺りはこの御影石が細かくなった砂だから。
この特徴ある白い砂、明るい色の風景は古くから文学作品の中にも表現されている。
甲東園エリアにみられる御影石の風景
御影石の産地に近い西宮でも街のあちこちで御影石の石垣の風景は多かったが、最近は自然石の石組みがだんだん減ってきている。
甲東園付近に残る、御影石のある風景をまとめてみた。
甲東園駅から上甲東園の方に登っていく道の一つに、こんな階段の道がある。
朝夕は関学の学生の姿も多い道。
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甲東園が御影石エリアであると書いた理由の一つが、駅の近くにある仁川学院の石垣。
広い学校の敷地を取り巻く御影石の石垣が今でも残っている。
もう長い間、日常の風景になっているので改めて注目する人も少ない。
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駅に近い住宅街でも、御影石の石垣が徐々に姿を消していっている。
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自然石の石垣は、阪神淡路大震災でも強かったようだ。
強度もさることながら、様々な形や大きさの自然石を組んで、高さも一直線になっている石垣は美しいと思う。
景観って、なんだろう?!
古くからあるものを残すだけが景観ではなく「良好な景観の形成は、現にある良好な景観を保全することのみならず、新たに良好な景観を創出することを含むものであることを旨として、行われなければならない。」と景観法の基本理念にも書かれているが、「街は見られることで美しくなる!」という言葉を改めて思い出した。
街の美しさを意識することが大切なのかもしれない。
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「ピンクの御影石は桜が詰まった石」by 三宅正弘教授(武庫川女子大学)
工学博士の三宅正弘先生は、まちづくりや地域デザイン、環境デザインが専門。都市計画などの委員も務める。
三宅先生のお話の魅力は、都市計画や地域デザインなどを「地域の資源=地域の宝」の話から入られること。
そんな「地域の宝物」を見つけるためには「地域をじっくり歩かねば見つけられない。」として一定期間、毎日ケーキを食べ歩き(種類を決めて食べ歩く)スケッチされている話などは有名だ。
以前にお話を聞きに行った時にもそんな話もしながら、机の引き出しに入ったたくさんの石を見せていただいた。
その頃は「石バンク」の話もはずみ「阪神間の山手には、六甲山のピンク色の石(御影石)がたくさん埋まっています。昔、住宅地を造成するときには、工事現場から出た石を使って石垣が組まれていました。そうやって造られた住宅地では、そんなピンク色の石垣が続いています。でも、いまは道路工事で石が出てきても、小割りにして捨てられてるんです。引き取り業者がなくて捨てられています。六甲山のピンクの御影石は、阪神間の人達が共有できる宝物だと思います。」
三宅先生は、このピンクの御影石を「桜が埋まった石」という表現をされていたが、桜のまちの西宮だが、ピンクの御影石の石垣の景色もだんだん少なくなってきている。