西宮市立郷土資料館学芸員 合田茂伸さん
今私たちが目にしている風景は、たくさんの年代のレイヤーが重なって一つに見えています。現代の風景には、非常にたくさんの過去が散らばっているんですね。例えば、一番新しい阪急西宮ガーデンズを例にしても、その前は西宮球場であり、さらにその前は畑であり、さらに遡ると「高畑町遺跡」という奈良時代の武庫郡の大領・日下部氏の木簡が出土した所です。ガーデンズの北側のひなた緑地には、そんな歴史を記したモニュメントが建っています。
このように今の風景を見ると、西宮には豊かな自然と多重の歴史に裏打ちされた「まちの魅力」があることに気づかされますし、その歴史や自然は現在・過去・未来の人々を結びつけてくれています。
香枦園浜(御前浜)に建つ西宮砲台がありますが、あれも貴重な幕末のレイヤーなんですね。日本で4つしか造られなかったタイプの砲台で、国家プロジェクトとして造られ、当時のままの自然の浜と建物の周りを取り囲んでいた土堤(松林にその名残がある)が残っている御台場は他にありません。西宮ならではの誇れる歴史をもっともっと伝えたいです。
<甲子園球場>
武庫川の支流の枝川と申川の廃川跡地を阪神電鉄が買い上げ、その両廃川の頂点の所に建っている甲子園球場は大正時代のレイヤー。平成の大改修で外側はきれいにお化粧したが、中身は歴史が詰まっている。外野スタンド側にある甲子園歴史館も必見の価値あり。
<西宮砲台>
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当時の国家事業として勝海舟のアイデアによって建設された。砲台とその砲台を取り囲む土堤、それらが昔のままの自然の浜に建っているのは、とても貴重な財産。幕末の歴史の風景がたくさん残っている。
<西宮神社>
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えべっさんの総本社。鳴尾の漁師が網にかかったえべっさんをこの地に運んできた。赤門付近では平安時代の終わり頃に頃から町として急激に発展した様子がわかる物が多く出土しており、その頃に鎮座していたと思われる。また作家・村上春樹はここの池で遊んだ思い出を「辺境・近境」に書いている。
<甲山神呪寺>
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平安時代の初めにはあったと思われる。えべっさんが新しい勢力としたら、ここはそれより前からあった旧勢力の地か。日本三大如意輪のご開帳は毎年5月18日。
<広田神社>
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延喜式に名前が見える古社(旧官幣大社)。境内に自生するコバノミツバツツジの群落は有名。3月の初めには、阪神タイガースの隆盛必勝祈願祭も行われる。