考古学に目が向いた時から、道を踏み外しましたね~(笑)
「僕が考古学を知ったのは、大学受験の時なんです。」
少し意外なお答えが返って来た。
「高校時代までは全く考えてもいませんでしたね。まず社会科が苦手でしたし…」専門分野が考古学とお聞きした時から、てっきり考古学少年と思い込んでいた。
大学受験の時に「へぇ~、こんな分野があるんだ。」とその道を選んだそうだ。人間の転機ってどこにあるのか分らないもの。予備校時代に『日本人はどこから来たか』という本と出会ったのが運命の分かれ道だったと合田さんは振り返る。
「この道を選んだ瞬間から、道をふみはずしていますからね~。」と言いながらも、どこか楽しそうなお顔。『普通の道=企業のサラリーマン』だとしたら、それとは別の道で、一般的に少々就職先も狭い道ではある。
「常々、この部署(文化財グループ・市立郷土資料館)は、お問い合わせの最後の砦になろう…と言ってるんです。」
市民からの質問や、たまには外国からのメールが舞い込んだり、マスコミや庁内からも問い合わせが入るという。
「殆どの方が最後にここにたどり着かれるんですね。
ですから『知識難民を作らない!』を合言葉に、たとえ即答が出来なくても何とかお答えしています。」
「ただ、答えだけを教えるというよりは、文化財などに理解を深めていただきたいので、学び方の方法をお教えするようにはしています。」
西宮市郷土資料館
[URL] https://www.nishi.or.jp/bunka/rekishitobunkazai/ritsukyodoshiryokan/index.html
[住所] 兵庫県西宮市川添町15-26
[TEL] 0798-33-1298
[FAX] 0798-33-1799
[開館時間] 10:00~17:00(入館は16:30まで)[休館日] 毎週月曜日・年末年始
*展示替え期間・資料整理期間は展示室を閉室
[観覧料] 無料
[団体見学] 学校団体:児童プログラムを用意 一般団体:解説小講座を開催 *いずれも事前に連絡
[交通] 電車:阪神電車「香櫨園」駅下車南へ徒歩6分、JR「さくら夙川」駅下車南へ徒歩14分、阪急電車「夙川」駅下車南へ徒歩17分 バス:阪神バス西宮浜手線(阪神西宮ー泉町ー阪神西宮)「川東町」下車すぐ、阪神バス尼崎神戸線(阪神尼崎ーJR西宮駅前ー神戸税関前)「夙川」下車南へ徒歩13分
市民と一緒になって何か出来ないだろうか??と、5年前(2006年)に『文化財調査ボランティア(西宮歴史調査団)』を立ち上げた。
「それまでに、大学の先生などをお招きして石造物の扱い方の講座などを開いていたんです。その講座の常連の方々を中心に、一般公募もして4つのグループで出発しました。」
歴史好きの方には二つのアプローチがあるらしい。一方は知識が好きな人、もう一方は物に関心がある人。
現在の調査団は、フィールドワークが中心なので、どちらかと言えば後者の方々が多いようだ。来年度の募集は、2011年2月25日発行の市政ニュースに掲載される
最初から長期的に考えて、市内の文化財を全部リストアップしようという目標を立てたという。
そうした成果は、本にして売ることも視野に入れている。
年に一度の発表会では、調査団の方がパワーポイントを駆使して大作の発表になるという。
現在は①石造物 ②お地蔵様 ③橋 ④街道 の4グループがそれぞれ自主的に活動して成果をあげている。
「市の職員だけでは到底手が回らないことが多いです。街を歩いて目に付く文化遺産を4つのジャンルに分けて手伝っていただいています。」
文化遺産…というと、古いものがいい!!と思われがちだが、せいぜい50年ぐらいの新しい物であっても、知らずになくなってしまうのは良くないと合田さんは言う。
「あの、大震災の時に本当に多くのものが無くなってしまいました。知られないままに、どれほど多くのものがゴミになってしまったか…。それが残念でした。近現代の物にも光を当てたいんです。市民の力で光を当てると、市民が大切にしていただけますから、それがいいんです!!」
「いにしえの歴史は、権力者が自分の都合の良いように書いた書物が歴史になっていました。今でも、歴史はやはり専門家の手の中にあるように思います。私は、市民が歴史を書いていけるようになって欲しいと思います。」
合田さんの文化財へのあふれる思いを垣間見た気がした。
調査団が誕生して6年目を迎えようとしている。
その活動についてこんなエピソードを教えてもらった。
「例えば橋…。私達の感覚でいうと橋は土木遺産的な発想になってしまうので、どうしても道とは切り離して考えられないんですね。
ところが、調査団の皆さんは違った!!なんと川から入られたんです。
一つの川の橋を順番に調べていくという方式でした。
それも、取り掛かったのが新堀川という小さな川…。
実は、あれぐらい小さな川だと、住民がかけた橋もあるんです。
調査団の皆さんは、橋の近辺を一つずつ聞き取り調査されたんです。」
びっくりしながらも、そのパワーに驚かされたという。
かえって自分達は『専門家バカ』だと合田さんは笑う。
もう一つ、合田さんがびっくりしているのが『お地蔵様』のグループ。
お地蔵様については、普段から結構お問い合わせもあるという。ただ、どこも管理していなくて、これまでも答えようが無かった。
「調査団のお地蔵様グループは、市内をひたすら歩いておられるんです。グループ内でそれぞれの持ち場を決めたら、あとは自由に歩いてその結果が資料館に随時FAXされてきます。『○○町の××、ありませんでした』って!!あれだけ丹念に市内を歩かれているのは、あの方々が初めてだと思いますよ。本当に、とんでもないことです。もう市内の3/4ぐらい制覇されています。後は山の方が残っているようですが、そちらも歩かれるようです。」
第1次資料(元資料)を調べるのが、歴史を調べる基本だと合田さんはいう。
取材の日には、ケーブルテレビの取材が入っていて「西宮市立郷土資料館は、西宮地方の歴史と文化を実物資料をとおして学ぶことができます。…」とカメラの前で郷土資料館の説明をしておられた合田さんの姿があった。
この日取材されていたのは、ケーブルテレビの西宮市の広報番組「フロムにしのみや」が定期的に放映している「西宮ライブラリー 見どころプロムナード」で2011年3月28日から一週間放送される予定です。
香櫨園周辺の様子が紹介されますので見てくださいね。