宮水の危機と保全

宮水庭園

古代の西宮は現在の阪急線の近くまで内海が広がっていた。この海が、夙川及び東川の運んでくる土砂で埋まり、現在の西宮市の中心街となっている。西宮神社赤門につづく旧国道を歩いてみると、神社に向かって右側がなだらかに下がっているのが分かる。他方左側はやや急激に低くなっており、右が内海で左が外海(瀬戸内海)となっていたことが分かる。
「宮水」は六甲山系に降った雨が花崗岩の中を潜り抜け、伏流水となって元海底であった貝殻層を通り、ミネラル豊富な水となる。「宮水」は「戎伏流水」、「札場筋伏流水」、「法安寺伏流水」の三つが宮水地帯でブレンドされ酒造りに適した水となる。

廣田神社境内の西宮古代地図
宮水井戸と伏流水の流れ

「宮水」の成分は、リンが特異的に多く、カリウム、カルシウム成分を多く含み、鉄分が極めて少なく、適度な塩分を含む。
宮水地帯の井戸の水面は地表からわずか2~3mのところにあり、海水面とほとんど変わらない。
そのため海水浸透の影響を受けやすく、これまで数度の危機にみまわれてきた。

宮水地帯の撤収危機

「第一の危機」は、明治末~大正にかけて、西宮港改築工事のため、海水が浸透。塩素の含有量が激増し、「第一次宮水撤収地帯」が出来た。
「第二の危機」は、昭和9年秋、室戸台風が宮水地帯を直撃。高潮で宮水地帯が浸水し、塩素の含有量が増加。「第二次宮水撤収地帯」が生じた。

現在の宮水地帯

「宮水」は昭和60年(1985年)に環境省の「名水百選」に選ばれている。当然、昔はこの地域の家庭では井戸水を生活用水として使用していた。灘の酒は寒造りと言われている。酒造りの季節になると沢山の酒蔵が一斉に「宮水」を汲み上げて酒造りを始める。すると井戸水が枯渇し、各家庭での生活用水が確保出来なくなる。そのため、大正13年に酒造家は越水浄水場の建設に多額の寄付を行い、全町に上水道を寄付し、「宮水」を守っている。(越水浄水場と酒造家

越水浄水場に掲げられた紀德碑の説明版

宮水地帯は阪神工業地帯の中にあり、工場建設やビルの建設による環境破壊から「宮水を守るため、酒造家による土地の保有を行い保護している。
また、すぐ北を走る43号線上の高速道路を建設する際も、伏流水の経路を破壊しないように、橋脚間のスパンを広くするなどして保護を行っている。

国道43号線上の高速道路、橋桁のスパンが非常に広い

ここに紹介した以外にも化学工業の誘致の話が起きた時、宮水への影響を懸念した酒造家を中心にした誘致反対運動等が起こったが、これも大きな危機であった。

投稿日時 : 2022-07-28 15:46:51

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