今年も残りわずか。大掃除をすませると、いよいよ迎春準備ですね。
西宮神社では、毎年12月27日に「煤払い」が行われます。煤払いの後、拝殿両側には大きな門松が建てられますが、実は少し変わった形をしています。
それが、西宮ならではの「逆さ門松」。そこには、今も受け継がれる心温まる由来がありました。
松の枝を逆さにする、その理由は…
西宮神社の門前町では、古くより十日えびすの宵宮にあたる1月9日の夜、各家の門口に立ててある門松の枝を逆さにつけ替える風習がありました。昔の門松は、枝葉のついた大きな斎竹に松を盛り添えて造られており、通りが狭くなるほど立派なものだったといわれています。
そのため、えびす様が神馬に乗って市中を巡行される際、鋭い松の葉先がえびす様を傷つけては大変と気遣い、松の枝を逆さにしたのだそうです。

(画像提供:西宮神社)
1月9日の夜、各家では門松を逆さにつけ替え、門戸を閉じ、物音を立てずに静かにえびす様をお迎えする「忌籠(いごもり)」の風習がありました。
西宮神社でも、1月9日の夜12時にすべての門を閉ざし、忌籠神事が行われます。
そして忌籠が明ける午前6時、大太鼓の音を合図に表大門が開かれ、走り参りをする人々を迎え入れます。これが全国に名だたる「開門神事 福男選び」です。
昔ながらの風習は、地域の宝物
氏子のやさしい心を伝えるこの「逆さ門松」の風習は、長らく途絶えていました。
しかし2008年12月、神社に残る文書や絵巻をもとに、かつての形に近い逆さ門松が復元されました。
材料の調達や飾り付けは、西宮神社の分社である三田市の三田戎神社の氏子の方々が担当。
西宮流スタッフもその現場に立ち会い、取材をさせていただきました。

以後、毎年煤払いの後に奉納され、今で境内に生える7メートル余りの若竹を揃えた逆さ門松が境内を彩ります。すっかり西宮の歳末の風物詩となりました。
ご家庭でも飾れる「逆さ門松」
かつては多くの家庭でも飾られていた逆さ門松ですが、現在の住宅事情では同じ形を再現するのは難しいもの。
そこで西宮神社では、家庭でも飾りやすい形に調整した「逆さ門松」を授与しています。
マンションの玄関扉に飾っても違和感がなく、生の松の葉の清々しさを感じられます。
1月9日の夜に逆さにできるよう工夫されているのも特徴です。
社務所にて、初穂料2,000円で授与されています。

尖った松の葉で傷つかないように――
そんな相手を思いやる発想から生まれた逆さ門松。
この風習が育まれてきた西宮の土地柄を、あらためて誇りに思います。
思いやりの心が、新しい一年にも受け継がれていきますように。





















