西宮で生まれた新種のさくら『夙川舞桜』
平成11年、雲井町に自生していることが確認され、その後、植物生産研究センターでバイオテクノロジーによる増殖に成功。平成17年に市民の投票により名前がつけられたピンクのかわいい桜。
花びらは、その名前のように舞うように踊っている。花弁が10枚くらいまでの半八重の桜で、最初は薄いピンクで徐々に白くなり、最後は赤く染まって散る。山桜と何かの自然交配種。
「桜は少し表情が違うと、新種か否か、命名するか否かと論議をよびます。人間でも兄弟で顔が少しずつ違うように、その程度は桜の個性なんです。育種家の方は新種発見することも目的の一つなので、どんどん品種が増えていくことが、ある意味で喜びなのかもしれません。
しかし樹木医として樹木保護の観点から考えると、市民に愛される桜の名所で自然偶発的に生まれた新種…それこそが本物の新種だと考えます」と樹木医の藤原さんが語ってくれた。
桜は元々個性的なもので、その種類は多い。そして桜の多い土地では、新種の桜が生まれる可能性が高いという。
さくら100選に選ばれ、市の花が桜の西宮にはその可能性が大きかったということらしい。
「平成6年と11年に夙川全域の桜の大掛かりな調査をしました。それまで、きちんと把握されていなかった桜の数が1670本だと確認したのもその年です。」
「夙川を中心に少し範囲を広げて調査したときに、見つかりました。実生(みしょう)のものだと確認され新種である確率は高かったのですが、形質を確認し新種と判断されたのは17年です。」と藤原さん。
「夙川舞桜」は山桜系の桜だが、ソメイヨシノとほぼ同時に咲く。一番目に付くのは、阪急夙川駅前の羽衣橋の南東の角と市役所前の六湛寺公園。そのほか、市内の公立の学校にも配られているらしい。
まだ人の背丈より少し高いくらいの木だが、西宮が「夙川舞桜」の地になるように市民として育んでいきたい。