今津駅のすぐ近くにあるお稲荷さん。
西宮のふるさと民話に出てくる「今津の桜翁」にまつわる神社。
物語の中では、狐が化けたお爺さんの言い伝えが載っており『今津の桜翁』として出てくる。
まんが日本昔話にも「昔、兵庫の西宮はお酒作りの盛んなところだった。今津の浜には大きな酒蔵が並び・・・・」と出てくるお話。
緑の木々の間に開いた見落としそうな小さな門。
小さいオヤシロだが、きれいに祀られている。
石の鳥居の奥には赤い鳥居が並ぶ。
その後ろに奇麗に保たれている「桜翁大神」の額がある稲荷神社がある。
稲荷神社には一対の狐が神社を守るように置かれている。
口に何かを咥えている。左の狐は「巻物」、右の狐は「玉」が見られる。
その意味は、巻物は「知恵の象徴」、玉は「玉鍵信仰」または「穀物の倉庫」と言われている。
西宮につたわる「ふるさと民話」には次のように書かれている。その一部を紹介する。
いつのころからでしょうか。人々が一日の仕事をすませてくつろぐ夕暮れになると、ひとりの品の良いおじいさんが訪ねてくるようになりました。
おじいさんは碁を打つのがじょうずで、たちまち「これは良い相手が出来た」とみんなによろこばれるようになりました。また碁の合間には、いろいろな土地のめずらしい話やおもしろい話を聞かせましたので、みな引きこまれて聞くのでした。
「きっと名のあるご隠居さんでしょう。名前をお聞かせください。」とたずねられても「みなさんは私を『桜翁』とおよびくださいますが、名のるほどの者ではございません。」と、おだやかに笑うだけでした。
満々と酒をたたえた大桶の中に、前足をねずみ取りにはさまれたキツネが一匹うかんでいました。酒の中でねむっているようなその顔は、ほおをほんのりとそめていました。好きな酒を十分飲んで満足だったのでしょうか。
西宮ふるさと民話 西宮市郷土資料館
「とても上品なおじいさんだったのに。たった一枚の油あげで命を落としてしまうとは。かわいそうな事をしたものだ。」
生前の桜翁をしのんであわれに思わない者はいませんでした。何も悪いことをしたわけでなく、ただお酒が飲みたくて訪ねてきただけでした。桜翁との楽しかった夜を思い出して人々は悲しみました。
昔から桜翁は皆さんに愛されていたのでしょう。