西宮は酒蔵の街。
あの阪神大震災の被害は古い木造の酒蔵にも大きな影響を与え、今は酒蔵通りを歩いても残念ながら「蔵の街」という風情はあまりない。
とはいえ日本酒造りが始まるこの時期、日本でも名だたる日本酒のメーカーが集まる酒蔵通り周辺を歩くと日によってお米を蒸す香りなどが漂ってくるので「ああ!今年も冬がやってくるのだ!」と思う。
新酒の季節を告げ、酒蔵の風物詩にもなっている「酒林(さかばやし)」の 付け替えが、2024年10月24日に白鹿記念酒造博物館の玄関先で行われた。
辰馬本家酒造の「酒林」作り
辰馬本家酒造では、これまでも毎年、社員が杉の葉を刈るところから酒林づくりのすべての工程を行い、出来上がった酒林は白鹿記念酒造博物館の玄関に飾られてきた。
今年も、10月15日(火)に宝塚の造園業者の山で杉の葉を採取し、少し乾燥させたあと酒林の制作を開始した。
酒林の制作は杜氏や蔵人から代々受け継がれた方法で、酒造りの合間を利用しながら杉の葉刈りから数えて約10日間かけて完成する。
醸造部歴20年の阿部さんが中心になって、今年もきれいな「酒林」が作られ、2024年10月24日(木)に付け替えを行った。
ちょうどこの日は辰馬本家酒造の令和6酒造年度に初めて新酒をしぼる「初揚げ」の日となり、新酒が無事に出来上がったことへの感謝と喜びも込められた。
青々とした杉の葉が清々しく香る新たな酒林に「厄難が“すぎ”去るように」との願いも込め、一般のお客様のお立ち寄りが可能な白鹿記念酒造博物館 記念館の玄関先に酒林を吊るしている。
今年の酒林の大きさは、直径約95センチ、約100キロの大きさで、社員4人が力を合わせて付け替えを行った。
「酒林」とは・・・
酒林とは杉の葉を束ねて球状にまとめたもので、江戸時代には酒屋の看板として軒先に吊るされ新酒が出来た事を知らせていた。
初めは青々とした杉の葉が徐々に茶色くなっていくにつれ、酒が熟成してきたことを表している。
「酒林」を作る杉は、酒の神様をまつる大神(おおみわ)神社のご神木でもあり、酒屋にとって神聖なものであり、杉材はお酒を入れる樽の材料や、伝統的な酒づくりの道具に多く使われている。
白鹿記念酒造博物館の紹介
「白鹿記念酒造博物館(=酒ミュージアム)」は、特色ある酒のまち西宮の「生活文化遺産である酒造りの歴史を後世に正しく伝える」ことを目的に、昭和57(1982)年に設立された。
消えゆく酒造用具や古文書史料などを保存し、酒のまちの景観を形作る酒蔵をそのまま利用した博物館として大勢の来館者を迎えている。
開館と同時に西宮市から寄託された「西宮市笹部さくらコレクション」も含め、酒と桜の歴史や文化の研究や公開、成果の発信を行っている。
日本にただひとつの「日本酒」と「さくら」の博物館になっている。
現在は、2024年11月8日まで秋季展が開催中で、近世(江戸時代)の狩野探幽や土佐光起等の作品や、後期は洋画に対する「日本画」として制作された近代(明治時代~戦前期)の川端玉章や橋本関雪等の作品が紹介されている。
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