今年は午(うま)年。
干支の話題が出てくると、なんとなく動物の姿を思い浮かべますが、「馬」と聞いて西宮を思い出す人はあまりないでしょう。
けれど、少しだけ西宮の歴史をたどってみると、このまちは思っている以上に馬と深い関係を結んできた場所だということが見えてきます。
2026年最初の記事は、西宮と馬の深い関係をまとめてみました。
えびす信仰と「馬の字」のつく姓
西宮には、今も「馬」の字を含む姓がいくつも残っています。
西宮神社のウェブサイトで紹介されている 「西宮十五馬」家 という言葉は、このまちにおいて「馬」が特別な意味を持っていたことを象徴しています。
※ 西宮十五馬・・・辰馬、一馬、六馬、七馬、八馬、十馬、乙馬、葛馬、小上馬、善茂馬、他人足馬、興四郎馬、大黒馬、大徳馬、小唐馬(西宮神社公式ウェブサイトより)
西宮で「馬」は、西宮神社の神幸の騎馬の共や宿場の役に関するような役割と責任からきた名前 だったようです。
西宮郷と鳴尾、二つの場所の『辰馬』
西宮で「馬のつく姓」・・・と聞くと、多くの人が思い浮かべるのが「辰馬」ではないでしょうか。
西宮郷の辰馬家は本家・北辰馬・南辰馬・本町辰馬と隆盛を極め、「白鹿」「白鷹」などという銘酒を生み出し西宮を日本有数の酒どころへと押し上げました。
『白鹿』ブランドの辰馬本家酒造➡︎と伊勢神宮の御料酒として選ばれている『白鷹』➡︎。
辰馬本家酒造(白鹿)
白鹿ブランドの日本酒の蔵元として酒造業をはじめたのは1662年のようで、その後海漕業・金融業などにも広がっていきました。
しかし商売とは別に、上水道敷設費を寄付して越水浄水場が建設されたり、甲陽学院を設立したり、市役所横にあった旧中央図書館建設費を寄付したりという社会貢献活動にも取り組んでこられています。

本社敷地内には、昔の本社として使われていた建物が
『宜春苑』として残されている
白鷹(北辰馬)
1862年、初代辰馬悦蔵氏が辰馬本家(白鹿醸造元)から分家し、新たに酒造業を興しました。
三代目辰馬悦蔵翁氏は1976年に辰馬考資料館➡︎を設立し、富岡鉄斎作品と銅鐸と玉類等収蔵品が多い博物館になっています。
夙川のほとり松下町にある資料館は、年3回の企画展として開かれています。

伊勢神宮に収められるお酒
辰馬喜十郎邸(南辰馬)
白鹿酒造記念博物館の西側に洋風建築物があります。
1881年(明治21年)に、日本人の大工の手で建てられたモダンな建物ですが、南辰馬家の辰馬喜重郎邸として建てられました。震災後は非公開になっています。
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辰馬半右衛門(鳴尾)
一方で鳴尾にも「辰馬家」がありますが、どうやら上記の辰馬家とは血縁はないようです。
こちらも古くから鳴尾の名士だったようですが、やはり酒造業/海運業から始まり、大地主であったことから阪神電車をはじめ、様々なところに土地を提供されています。
第14代辰馬半右衛門の功績が 銅像という形で街に残されましたが、戦争中の金属供出によって銅像は無くなっています。
しかし、今もその銅像の台座だけが里中町の寿公園に残されています。
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多門ビルに名残が残る八馬(はちうま)
八馬家は、米の小売業から八馬汽船を興し、海運を通して西宮の経済と街の発展に深く関わったようです。
国道43号線と市役所筋が交わる南西の角に、古塚雅治氏によるコリント式のジャイアント・オーダー(二層分の通し柱)が特徴の多聞ビルディング➡︎が今も残っています。
元八馬汽船事務所として建てられたもので、2階を八馬汽船の本社、1階を西宮銀行(その後合併して神戸銀行となり、現在は三井住友銀行)として使用されました。

八馬家が所有していた多聞酒造は、今は大関酒造から販売されています。
馬の名を持つ家々は、単に財を成した家というだけではなく、酒造、海運、地域経済、文化・・・と西宮というまちを動かす力を、それぞれの時代で担ってきた家々でした。
「馬」という字は、速さや力強さの象徴であると同時に、人と社会を前へ運ぶ存在を意味していたのかもしれません。
西宮神社の馬たち
先に書きましたが、西宮に「馬」のつく姓が多いのは、西宮神社の神幸の騎馬の共の仕事に関係する人たちだったようです。
江戸時代には、えびすさまが白馬に乗って市中を巡行され広田神社に行かれるので、門松の松葉が神様を傷つけないように一月九日の夕刻、各家では門松を逆さにつけかえ、門戸を閉じ、もの音をたてずに静かに夜が明けるのを待ち、早朝先を争って社参したと記されています。(西宮神社公式サイトより)
また、神社で馬を飼っていた時期もあったといいます。 そんな西宮神社の中に馬を探してみました。
※ 神馬舎の神馬像・・・十日えびすの前夜にえびすさまが白馬に乗られて市中を巡行されるという伝承が残されています。

※ 拝殿前青銅神馬・・・白鷹酒造の初代辰馬悦蔵氏の篤志により、辰馬家一統の賛助のもと明治32年に奉納されました。後藤貞行作。

※ 神馬歌碑・・・辰馬家一統により奉納された拝殿前の青銅神馬の賛碑
※ 神馬記念詩碑・・・明治三十二年奉納された青銅神馬の賛碑
戦前、西宮には競馬場が二つあった
「西宮と馬」の関係を語るうえで、欠かせないのが競馬場の存在でしょう。
明治から昭和初期にかけて、鳴尾一帯には 鳴尾浜西競馬場と鳴尾浜東競馬場の二つの競馬場 がありました。
のちに統合されて「鳴尾競馬場」となり、さらに改名されて「阪神競馬場」となりました。
(阪神競馬場は、戦後宝塚に移転しています。)
戦争中は、元の鳴尾浜西競馬場は戦争中は飛行場となっています。

今、その飛行場の跡地は武庫川女子大学の中高の学舎や住宅地になり、競馬場(飛行場)の姿は街の風景からほとんど消えています。
ただ競馬場時代の貴賓館は、武庫川女子代の中高の芸術館として今も残っています。
この場所がかつて「馬が走っていた場所」であることを知ると、見慣れた街並みが少し違って見えてくるような気がします。
今は名残もない競馬道/おけら街道
競馬場が二つもあったことで大勢の人が集まり、賭け事の影響で鳴尾には質屋が多かったようです。
武庫川女子大中高の芸術館(競馬場時代の貴賓席)あたりから、今の本郷学文筋までまっすぐに続いていた道は、競馬道とかおけら街道と呼ばれていたようです。
(現在は、東高校の敷地となっていて途切れています。)

(西宮市デジタルアーカイブより)
「鳴尾記念」に残る西宮
競馬場そのものは西宮から姿を消しましたが、「鳴尾」の名は、今も競馬の世界に生き続けています。
それが 「鳴尾記念」 です。
鳴尾記念は、現在も宝塚にある阪神競馬場で行われている伝統ある重賞レース。
開催地が変わっても、名前が残る・・・
それは、西宮が日本の競馬史の一端を担ってきた証でもあるように思います。
名前が残る・・・といえば、川西市に「鳴尾ゴルフ倶楽部」がありますが、これも西宮の鳴尾がルーツです。
こちらは、鳴尾東競馬場が閉鎖された後「鳴尾ゴルフ場」となっていましたが、昭和の初めに移転しました。
馬をたどると、西宮のまちが浮かび上がってきました
西宮の歴史を語るとき、酒や海、えびす信仰、競馬場は、それぞれ別の話題として語られます。
けれど、「馬」を軸にして見てみると、それらは一本の線でつながっているようにも思います。
昔は、馬は人間のすぐ横にいました。
馬が人間や物資を運んでいたということは、宿場町として栄えた西宮にはたくさんの馬もいたことでしょう
今の風景に歴史を見つけることはだんだん困難になっていきますが、歴史をちょっと知っていると、もう一枚の層を重ねて歩くことができるかもしれません。
この他にも西宮の馬を探しましたーー
『西宮甲山乗馬クラブ』
甲山の少し西、西宮市鷲林寺2丁目に『西宮甲山乗馬クラブ』があります。
1991年設立のようですから、震災の少し前なんですね。
県道から乗馬クラブへ入る交差点には「一生馬に乗らないつもり?!」という挑戦的な大きな看板が出ています。
近くで、貸し農園などもされています。詳細はこちら➡︎
大学馬術部
西宮市内には、短期大学と四年制大学をそれぞれ1つ数えると10大学があります。
多いですよねーーーー。
(残念ながら、甲子園短期大学は2026年から募集停止が発表されています。)
馬術部のある大学を探してみると、関西学院大学と武庫川女子大学にありました。
神戸女学院は2009年に廃部となっているようです。
題名に『馬』がつく西宮の風景の出てくる作品
作品の中に西宮の地名や風景が出てくる文学作品をまとめている『西宮文学回廊』というサイトがあります。
その中で『馬』の字のつく作品を探してみたら「山口瞳/草競馬放浪記」➡︎と「宮本輝/不良馬場」➡︎の2作品がありました。
『馬』の字のつく飲食店など
もっと他にもあるのかもしれませんが、馬の字のつくお店もここに書いちゃいましょう!!
(他にもあったら教えてくださいね)
☆ 番場亭・・・西宮北口にあるカレー蕎麦/カレーうどんが人気のお店ですね。西宮市甲風園1-6-7
☆ 武馬・・・西宮神社のすぐ横にあるお食事どころです。西宮神社の近くで『馬』が付くとなれば、店名の由来が聞いてみたくなります。西宮市社家町1-2
☆ あっ 馬・・・このお店の由来も聞いてみたい!!!きっと馬がお好きなんでしょうね?西宮市池開町8-9
☆ 肉の但馬屋・・・飲食店ではないのですが。西宮市学文殿町1-10-25
編集部より
午年の最初の記事として、西宮と馬についてまとめてみました。
過去記事も引っ張り出して、馬術部や店名、文学作品名まで書き込んでみましたが、情報等がありましたら是非ご一報くださいね。
午年の今年が皆様にとって良い年になりますように!!
























