服屋でもカフェでもない。人が集まる“場”という選択!「RAT★RACE」小川尚久さん

夙川の住宅街に移転した「RAT★RACE」が25年かけてたどり着いたかたちを取材した。
きっかけは、市内のゴミを収集する(株)大栄衛生と「RAT★RACE」がコラボしてユニフォームを作った!というニュースだった。

夙川への移転と同時に新しく作ったカフェを「当店を好む人の憩いの場ですね」と話すのは、店主の小川尚久さん。

その言葉どおり、この場所には“目的をひとつに絞らない人たち”が集まってくる。

「RAT★RACE」と大栄衛生のコラボが生んだもの

「ユニフォームを一緒につくりたいんです」
そんな連絡が、大栄衛生から届いたという。
西宮市制100周年と2026年4月からのごみ収集の分別が新しくなる・・・という節目に、コラボユニフォームを考えた大栄衛生はRAT★RACEの小川尚久さんに相談した。

夙川のアパレルカフェ「RAT★RACE」と、地域のインフラを支える企業とのコラボレーションはこうして始まった。

オリジナルグッズが並ぶ店内

「本当に自分たちでいいのか」から始まった

今回の話を受けたとき、小川さんは少し戸惑ったという。
「西宮市のごみ収集を担う大栄衛生さんと、うちがコラボしていいのかと…」

これまでにも様々なコラボを行ってきたRAT★RACE。
それでも、“制服”という仕事にはこれまでとは違う責任を感じたという。

ただのグッズではない。
日々の現場で働く人が着る「仕事の顔」になるものだから・・・。

ユニフォームに込めた“遊び心”

今回の制服には、RAT★RACEらしい工夫も盛り込まれている。

ユニフォームの腕には、店のキャラクター「RAT君」が、ごみ袋を持って走る姿。
そして、大栄衛生のハッカー車(ごみ収集車)のイラストは胸に入れた。

「子どもたちにも注目されるかもしれないですね」と小川さん。

腕にはゴミ袋を持ったラット君

機能性だけでなく、親しみやすさや楽しさも加わったデザイン。
街の中で見かけたとき、思わず目で追ってしまうような存在になりそうだ。

街で見かけたら、作業着にも注目してみてください!!

なぜRAT★RACEだったのか

「当店を好む人の憩いの場」にしたい!!という小川さんの思い。

もともとはアメリカンカジュアルの古着屋としてスタートした。
その後、店のキャラクター/ラット君の誕生とともに、オリジナルブランドを展開することになる。
そしてその後、夙川の現在の地へ移転するにあたって飲食を取り入れ、“アパレルカフェ”という独自のスタイルへと進化してきた。

服を買わなくてもいい。
コーヒーだけでもいい。
ただ居ることができる場所。

そんな余白のある空間には、自然と人が集まり、関係性が生まれていく。

「人」でつながるから、仕事もつながる

店には、0歳から90代まで幅広い世代が訪れるという。

一人で来て、知らない人と話し、いつの間にか顔なじみになる。
「常連さん?友達みたいな感じですね」
そんな関係性の延長線上に、コラボがある。

「熱意と人間性があるかどうか。お互いに向上できるならやる価値がある」
仕事でありながら“人としての信頼”が前提にある。

大栄衛生との制服づくりも、そうした関係の中で生まれたものだったのだろう。

街の仕事に、少しの“楽しさ”を

RAT★RACEの小川さんと大栄衛生の社員の方々

ごみ収集という仕事は、日常を支える大切な役割だ。
だからこそ、その姿が少しでも親しみやすくなれば、街との距離も変わる。

RAT★RACEの遊び心が加わった今回の制服は、“機能”だけでなく、“見られる存在”としての価値も持たせた。

子どもたちが手を振るかもしれない。
「あの服、いいな」と思う人がいるかもしれない。

そんな小さな変化が、街の空気を少しやわらかくするのかもしれない。

枠を越える店が、街を面白くする

RAT★RACEは、服屋であり、カフェであり、人がつながる場所でもある。
そして今回、企業の制服という新たな領域にも踏み出した。

「一業種だけじゃなくて、2つ3つできる店が増えたらいい」
その言葉どおり、これまでもさまざまなコラボをしてきたこの店は、常に“枠の外”へと広がっている。

「売上0円」をなくしたい!その発想がすべての始まりだった

もともとはアメリカ古着とミニカーの店としてスタートしたRAT★RACE。

しかし、ある現実があった。
「服だけだと、好きな色がない、サイズがないで、そのまま帰られると売上が0円なんです」

そこで思いついたのが、場づくりであり、積極的なコラボ戦略だった。

移転の時に考えたのが、「服屋で飲食ができたら、たとえドリンク1杯でも頼んでもらえたら0円じゃない。その上、お客様ものんびりできる」

服を見るだけでもいい。
コーヒーを飲むだけでもいい。
ただ居るだけでもいい。
そんな余白が、この店の大きな魅力になっている。

屋外テラス席

近所の人もいれば、名古屋から毎月通う人もいる。
移転後は芦屋からの来店も増えたという。

特徴的なのは、「ひとりで来る人が多い」こと。
けれど、店内では自然と会話が生まれる。
「飲食中に話して、友達になることもあります」
意図して仕掛けたわけではない。

けれど、“余白のある空間”は人と人をつないでいくのだろう。

「いらっしゃいませ」は言わない店

25年続く中で、店のかたちは何度も変化してきた。
輸入品の古着屋からオリジナル商品へ。
そしてコロナ禍を経て、現在の“アパレルカフェ”へ。

けれど、変わらないこともある。

「“いらっしゃいませ”は言わないですね(笑)。“こんにちは!”って迎える」
この一言に、この店の距離感がすべて詰まっているような気がする。

実際、常連客のことを尋ねると返ってきたのは「友達みたいな感じ」というシンプルな答えだった。

コラボの基準は「人」

RAT★RACEといえば、地域とのコラボも印象的だ。
ただし、やみくもにやるわけではない。

「熱意と人間性ですね。お互いに向上できるなら価値がある」

印象に残っているのは、洋菓子店とのコラボだという。
テレビ番組のロケで両店が取り上げられ、「人間国宝さん」に認定された。
店同士がつながることで、街の回遊も生まれることも実感した。

「仲の良い店舗同士だと、お互いのお店に行きやすくなる。それで“良い街”だと感じてもらえる」

“思いつき”がイベントになる店

この店では、少しユニークな取り組みも多い。
たとえば2階でやっている「寄席」や「宿題カフェ」。

落語会は、近所に住むプロの噺家がきっかけで定期的に開催している。
その噺家の提案から始まったのが「宿題カフェ」。

さらに驚くのは、25周年の企画。
なんと1週間、飲食を無料にしたという。

「約400人のお客様に感謝を込めて。ステーキも寿司も全部無料で出しました」
普通の店ならためらうようなことも、小川さんは“やってしまう”。

これからは「誰も予想できない店」へ

現在は、服屋でありながら飲食もできるスタイルが好評で、ランチだけの来店も増えている。

そして、次の構想もすでにあるようだ。
「はなれを作って、一人ステーキ焼肉屋をやりたいですね」

さらに目指すのは、「誰も予想できないお店」という未来だという。

“一つじゃない店”が街を面白くする

最後に、西宮にどんな場が増えてほしいかを尋ねた。

「一業種だけじゃなくて、2つ3つできるお店が増えたらいい」
服屋であり、カフェであり、人が集まる場所でもある。

RAT★RACEは、その“先駆け”として存在している。

場があるから、人がつながる

この店には、特別な仕掛けがあるわけではない。
けれど、人が居続けたくなる理由がある。

服を買わなくてもいい。
コーヒーだけでもいい。
ただ、ここに来れば誰かと出会えるかもしれない。

そんな場所が、街にあるということ。
それ自体が、ひとつの価値なのだと思う。

RAT★RACE

住所:西宮市大谷町7-13
営業時間:11時〜18時
定休日:毎週火曜日
ウェブサイト:http://ratrace.cart.fc2.com/

(株)大栄衛生

“地域の市民生活”と“地域事業者”の社会基盤であるゴミ処理を社会問題の解決と位置付けている会社。遺品整理などもグループ会社でおこなっている。
西宮市内のごみ収集業務も担っている。
住所:西宮市鳴尾浜2丁目1番26号
電話:0798-48-6980(代)
ウェブサイト:https://daiei.company/

投稿日時 : 2026-04-18 12:04:18

更新日時 : 2026-04-18 12:48:34

この記事の著者

編集部|J

『西宮流(にしのみやスタイル)』の立ち上げ時からのスタッフ。
日々、様々な記事を書きながら西宮のヒト・モノ・コトを繋ぎます。

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