ここには前方後円墳があったといわれてきたアサヒビール工場跡地で、順番に発掘調査がされ2022年から2023年にかけて調査したエリアからは、10基の埋没古墳や住居跡、鉄製品を造っていた工房跡などが、多くの埋蔵品とともに発掘された。
2015年頃の調査(工場跡の東エリア)
アサヒビール跡地は東側から順番に開発され、そこにはすでに様々な民間の建物が建っている。
そのあたりは建設前の2015年頃に調査され>>、鎌倉時代の井戸や牛や人の足跡がたくさん残された場所も発掘されている。
2022年11月の説明会
県と市が一緒になって造られるという新病院・県立西宮総合医療センター(アサヒビール跡地)で遺跡の発掘調査が進んでいたが、2022年11月13日(日)に一般向けの現地説明会が行われ、津門大塚町遺跡と名づけられた場所から8基の埋没古墳群が発表された。
前方後円墳の津門大塚山古墳があったと言われてきたが、新病院建設前のこの時期に初めて発掘調査が行われ、前方後円墳は確認されなかったがたくさんの埋没古墳が見つかった。
今回は西側の調査が進み8基の埋没古墳群(円墳や方墳)や形象埴輪、馬や牛の歯、祭祀を行うための場所ではないかとされる建物の柱跡などが確認された。
1辺3〜10メートルの小型方墳がほとんどであったが、一番大きいものは全長約21メートルの円墳で、祭祀場所と思われる方形の「造り出し」もあり、首長の埋葬が考えられるという。
この古墳群は6世紀の古墳時代に造られ、7世紀の飛鳥・奈良時代にはすでに埋められていたと推測されている。
また、現在の新病院建設予定地が海抜約6mで、埋没古墳群はここから約2m下がり、古墳群の下は海の堆積物などの地層になっているようだ。
2023年2月4日の説明会
2023年1月27日に県教育委員から、6世紀後半の建物跡からは鉄器製作の名残が出土しており、鉄を生産・加工する集団が住んでいた可能性が高いと発表された。
この時代にあった鉄鍛冶工房の発掘例としては、近畿屈指の規模という。
今回見つかった古墳時代後期の建物群に鉄を生産・加工する集団が住んでいた可能性が高いとされるのは、素材となる鉄塊(てっかい)や鉄を作る時にできる不純物の鉄滓(てっさい)、吹子の羽口(ふいごのはぐち)などが見つかったことで推測されるという。
また、西宮では初めて朝鮮半島で作られた陶質土器も見つかった。