リヤカーの駄菓子屋・だがしやあつしが目指すもの。最先端IT院生が価値を見出した「アナログなつながり」

だがしやあつし出店の様子

みなさんは駄菓子屋と聞いてどんなイメージが浮かびますか?少し暗い照明の小さな店内にたくさん並ぶお菓子やお年寄りの店主さん。そんなイメージを持たれるのではないでしょうか。しかし今回ご紹介するのは、西宮市で話題となっている「だがしやあつし」という移動式の駄菓子屋です。23歳の男子、田中篤さんが子供達のためにリヤカーを引いて西宮市内を駆け巡ります。「駄菓子屋が移動?リヤカー?」と気になることだらけの「だがしやあつし」の店主、田中さんに直接お話を聞きました。「だがしやあつし」とは一体何者なのか。駄菓子屋を通じて挑戦する若き店主の物語をご紹介します。

若き大学院生が駄菓子屋になったワケ

移動式駄菓子屋「だがしやあつし」の店主、田中篤さん
移動式駄菓子屋「だがしやあつし」の店主、田中篤さん

駄菓子屋の正体はITエンジニア!?

西宮の街を颯爽とリヤカーを引きながら駆け抜ける青年の名は田中篤さん、23歳。移動式の駄菓子屋「だがしやあつし」の店主です。
田中さんはリヤカーに駄菓子を乗せて、その日の売り場まで走って移動します。売り場によっては片道1時間も走ることもあるそうです。
そんな田中さんですが、兵庫県立大学大学院で情報セキュリティ (暗号)を学ぶ大学院生でもあります。
「暗号の研究を通じて、人々の大切な情報を守ることに貢献したいんです。」と田中さんは言います。最先端のデジタル技術に長けた彼が、なぜアナログな駄菓子屋という活動を始めたのでしょうか?

駄菓子屋になった理由はスマホ依存問題!?

きっかけは子供のスマホ依存に問題意識を感じたことでした。ある子供向け施設でアルバイトをしていた時に、スマホを触っていて子供と関わらずに過ごす保護者の姿をたくさんみて危機感を抱いたそうです。

「はじめに感じたのは怒りでした。」と話す田中さんの表情は真剣です。デジタル技術の専門家であるからこそ、問題の深刻さを強く感じた部分もあるのかもしれません。この問題に一石を投じたいと考えたことが駄菓子屋を始めるきっかけになりました。この問題を大人に投げかけても最初はうまくいかなかったそうです。正論を唱えるより良い方法を模索した結果、田中さんは「子供たちにアナログなコミュニケーションを届ける」移動式の駄菓子屋「だがしやあつし」という形に辿り着きました。

「こどもと関わることが、めちゃくちゃ好きで楽しい」と知った子供向け施設のアルバイト経験も、この選択の後押しをしてくれたようです。

駄菓子屋と子供達の物語

「だがしやあつし」の最大の特徴は、リヤカーを使った移動式の販売スタイルです。
「片道2時間までなら呼ばれればどこでも行きます!」と言う田中さん。イベント、施設、公園など様々な場所で子供たちを楽しませています。

「だがしやあつし」で販売している駄菓子の一部
「だがしやあつし」で販売している駄菓子の一部

だがしやあつしの失敗談

子供と接することが大の得意である田中さんにも失敗談があります。
それは駄菓子の無料提供です。
ある時、だがしやあつしで買い物をする子供が買った駄菓子を落としてしまいました。
無料で新しいものを子供にあげようとしたところ、その子の母親に「自分のお金で買い物をする体験をさせてあげてほしい」と言われたのです。
元々安い駄菓子。良かれと思ってしたことが、大失敗になりました。

しかし、この失敗から田中さんは、子供達は駄菓子屋で自分のお金をどうやって使おうか悩んだり考えたりする体験を提供できるのだと、気づいていなかった駄菓子屋の価値を学びました。

それ以来、お金の大切さや、お菓子を選ぶ楽しさを体験してもらうために、駄菓子の無料提供はやめたそうです。

「だがしやあつし」で買い物をする子供1
「だがしやあつし」で買い物をする子供1
「だがしやあつし」で買い物をする子供2
「だがしやあつし」で買い物をする子供2

約束の場所になる駄菓子屋

またある時、「だがしやあつし」に初めからお金を持ってやってくる子たちがいることに田中さんは気づきました。

今までは、田中さんに会ってからお金を取りに家に戻ってきて買い物を楽しんでいた子達。その子達が最初からお金を持ってきているということは、「明日だがしやあつしに行こうぜ」と子供達が遊ぶ約束をしてきていることを意味します。

このことから、田中さんに会っている時間以外の場所で、子供達の物語があり、駄菓子屋での買い物という体験は子供達の物語の中の一部であることを知りました。そして、子供達の遊ぶ約束の場所になれるという駄菓子屋の新たな価値にも気づき、とても嬉しかったそうです。

アナログでデジタルに勝つ:だがしやあつしの挑戦

子供と射的で遊ぶ田中さん
子供と射的で遊ぶ田中さん

大学院でデジタルの最先端を学ぶ田中さんは「これからの世の中は、ますます便利になっていきます。それは不便なことを見つけるのが難しいほど便利な世界です。」と言います。そして、そんな時代に価値が生まれるのは「不便なこと」だと確信しているのだそうです。

不便・面倒・非効率が魅力のアナログを楽しめる空間づくり

「今はイベント的な形でアナログ体験を提供していますが、いつかはアナログコミュニケーションを楽しめる場所を作りたいです。子供も大人も、昔の遊びや味覚を楽しんで、自然とデジタルから離れることができる。そんな居心地の良い空間を作るのが夢です。その為にもまずは『スマホゲームよりもだがしやあつしと遊んだ方が楽しい』と子供たちに心の底から思わせたい。」と宣言します。
アナログでデジタルに勝つ体験を提供することが、だがしやあつしの挑戦です。

だがしやあつしのファンクラブ

不登校の居場所で出店する「だがしやあつし」
不登校の居場所で出店する「だがしやあつし」

いかがだったでしょうか?
この記事では、デジタル化が進む現代だからこそ、アナログコミュニケーションの価値を再発見させてくれる存在である移動式駄菓子屋「だがしやあつし」についてお伝えしました。
田中さんは、子供たちにアナログコミュニケーションを提供するために日々奮闘しています。
地域に根差した彼の取り組みが、西宮の新たな魅力になる日も近いかもしれません。
まだまだはじまったばかりの「だがしやあつし」の挑戦は「だがしやあつしのファンクラブ」で応援することができます。

ファンクラブを通じて、温もりあるアナログコミュニケーションを子供達に届ける活動に、あなたも参加してみてはいかがでしょうか?

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執筆:かにかま

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