住宅地の北側に広がる甲子園球場約3.5個分の広い雑木林。この里山を守り育てようと住民たちが立ち上がって「ナシオン創造の森育成会」を組織した。「ナチュラリスト志願」と自ら名乗る初代会長の小西さんに話を伺った。
自分たちの里山を守ろう。大人も子ども活動に参加
今、東山台地区では住民の中で壮大な構想が練られている。
30年計画で、住民の力で里山を整備しよう・・・というのだ。
この住宅地の北側に、造成したときにわざと雑木林のまま放置された山がある。
14haといってもピンと来ないが、甲子園球場の約3.5個分といえば分かりやすいか。もともと、開発した住宅都市公団が「住民のふれあいのための里山」として位置づけ、定期的にレクレーション活動の後押しをしてくれていたのが始まりだった。
その後、都市再生機構となり支援がなくなったが、次第に住民の中で「森に興味を持つ人」も増え、5年経って“ナシオン創造の森育成会”が今年立ち上がった。
笑う人もいるけれど、まじめに壮大な30年計画
委員会の事務局には、この山を16のゾーンに色分けした地図がある。大きく分けて「保全の森」「再生の森」「育成の森」「活用の森」・・・その中には展望広場・きのこの栽培地・棚田広場・山野草の育成・冒険の広場・コバノミツバツツジの群生地・ヒノキ林・ホタル繁殖・スギ林などを予定。
里山に対する自分達の想いをしっかり入れている。しかしこの里山作りは「きれいな森だけでなく、植物学・生態学をきちんと踏まえている森」が目標だ。そのためには専門家のアドバイスも受けている。
名刺の肩書きは、ナチュラリスト志願
現在、委員会の会員は約20名。初代の育成会の代表は小西一郎氏。在職中から、退職後の明確な目標を持っていた。
ナチュラリスト志願・・・という肩書きは、開高健の本の題名からつけた。
この肩書きの名刺を作るにあたっては、県の兵庫県森インストラクターの認定を受けた。
白鷹酒蔵では、一年間の酒造りセミナーも受けた。
ナシオン創造の森の山林の中には、コバノミツバツツジの群生地があるのだが、そこを整備して「西宮コバノミツバツツジ園を作るのが夢」と語る視線が熱い!!
「30年計画です。」とさらりと言う顔が輝いている。
活動の原動力は、豊かな自然を守るという実感
公団から都市再生機構になり支援が無くなって、一時は活動が減った。しかし、徐々に森に興味を持つ住民も増え、やがてリクリエーション中心から森の整備中心の活動へと変化してきた。
活動の動機は“自分の健康のため・・・”“子供への思い・・・”“地球への思い・・・”など人様々。
人と自然博の服部先生のアドバイスも受け、統一の目標を模索した。
今は、「豊かな自然を守ることに携わっている」という実感をみなが持っていると胸を張る。なんという、豊かな生き方だろう。
都市再生機構から「この山林を西宮市に移管したい。」という提案が出ている。育成会では、今の間にしっかりした実績を作ろうと計画を練っている。
里山保全活動は今始まったばかり。
だからあえて、全く手を入れない区域(保全の森)も作っている。
それは、人間が作る自然が、もし間違った方向に行ったときに元に戻れる原点となるから。専門家の意見も取りいれ、細部まで計画されている。
「いずれは、西宮の自然に注目する時が来るでしょう。
今は、そのための実績をつくる時だと思っています。」さらりと言う住民が作る里山計画にワクワクしながら聞き入った。
緑の少年団の活動を支援
昨年、兵庫県が全国育樹祭の担当となった。
それが一つのきっかけで東山台の小学生で“緑の少年団”が結成された。
ナシオン創造の森育成委員会が、この少年団の活動を支援している。やがては、この子ども達が30年計画の担い手になるのだろう。
(写真提供:本村 春一さん)
(取材:O K)