佐渡裕

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2005年10月22日に西宮北口駅前に開業した兵庫県立の複合文化施設/兵庫県立芸術文化センター>>芸術監督。

佐渡裕

兵庫県立芸術文化センターは、阪神淡路大震災からの復興のシンボルとして誕生したが、音楽や芝居などの芸術が多くの人に勇気を与える役割をはたすとして、設立当時から佐渡裕氏の熱い思いが支えている。

<以下は、2011年4月9日午後1時半から行われた、芸文センター前の高松公園で東日本大震災の被災地へ向けてのイベントを控えての佐渡裕さんのインタビュー記事です。>

音楽は一緒に祈り、共感できるもの・・・
世界の音楽家たちの日本への思いを一緒に届けたい
                    指揮者 佐渡裕さん

震災の日、BBCのオーケストラとの演奏活動で東京にいた佐渡裕さん。
「オーケストラのメンバーの乗ったバスは横浜の橋の上だったようです。真っ青な顔のメンバーとその後ホールで出会いました。」その時の様子を、時々声を詰まらせながら語った。

その日の演奏会のキャンセルが決まり、その後本国からの帰国命令でBBCのメンバーが帰国。「実は、海外のオーケストラとの日本での演奏旅行は僕にとって始めての経験でした。とってもいい仲間だったので非常に残念ですが、いつかこの演奏会の続きが出来る状況になれば同じメンバーで同じ曲でやりたいと思っています。」

あの大災害の惨状が伝わるにつれ、被災地のことを思うと「命や食べ物が必要な時に、音楽ではお腹も満たしてあげられないし体も温めてあげることが出来ない・・・と思うと音楽ってなんて無力なんだろうと思いましたね。」

その後、パリでの活動に戻った佐渡裕さんに、ヨーロッパのあちこちから「YUTAKAが指揮台に立ってくれるなら、日本に向けて力を送る活動をするよ!!」という声が届いたという。

そんな声に支えられるように、デュッセルドルフでは2000人のホールがあっという間に一杯になった演奏会が開かれ、拍手のない『第九』が会場に響いたという。
「この曲を選ぶ時は本当に悩みました。日本では歓喜の曲のように思われている第九ですが、この曲はすべての人が兄弟になるというメッセージの曲なんです。でもコンサートが終わってみて、今こそこういう力が必要なんだと改めて思いましたね。」

自ら『泣き虫なんです』という佐渡裕さん、話の途中で声を詰まらせる場面が多かった。
阪神淡路大震災で被災した経験を持つ奥様がおられる佐渡裕さんは、今回の東日本の大災害にもとても心を痛めている。

「東北地方も、何度もコンサートで行ったホールがあります。直接に知っている関係者やコンサートで僕の曲を聴いていただいた方々のことを思うと、これから先のことも含めて心配でなりません。」

そんな佐渡裕さんにとって、ここ兵庫県立芸術文化センターは特別の場所。震災復興のシンボルでもあるこのセンターから出来ることを探しながら、息長い応援をしていきたいと話す。

「被災地にきちんと届くようなことを発信し続けたいと思っています。大切な楽器がなくなった人も一杯おられることでしょう。でも、音楽の原点はたいそうな楽器は要りません。まずは歌があればいい!!」とメッセージを送りながらも「被災地にとって迷惑にならない時期が来たら、誰もが口ずさめる曲を持って演奏活動もしたいと思っています。」と続けた。

「直接に被害を受けていない人も、心を痛めている人は多い。人を亡くした方の痛みは、きっと想像しても想像できるものではないだろう。でも、一緒に泣いているばかりでもいけないと思います。」一人の音楽家として落ち込みながらも、音楽家の本分を見つめなおすことになるだろうと話す佐渡裕さん。

「日本でも当然被災地に向けてしないといけないが、世界からの救援の手も必要だろうと思います。音楽は無力だと言いましたが、音楽は一緒に祈ること、共感を得ることが出来ると思います。思いが一緒になるということを実感することも大切だと思います。これからは、世界中の音楽家の思いを日本へ届けるのが僕の役目かも知れません。」

何度も目頭を押さえながらの会見だった佐渡裕さんの思いのこもった最初のイベントが、4月8日からの東日本大震災復興祈念ウィーク。4月9日の午後1時半から行われる

<プロフィール>
京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝。1995年第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール優勝。
現在、パリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ケルンWDR交響楽団、バイエルン国立歌劇場管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、北ドイツ放送交響楽団等、欧州の一流オーケストラに毎年多数客演を重ねている。2015年9月より、オーストリアを代表する100年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任し、欧州の拠点をウィーンに置いて活動している。
オペラ公演でも海外での実績を重ねており、2003年エクサンプロヴァンス音楽祭での「椿姫」(演奏:パリ管弦楽団)、2007年<オランジュ音楽祭>「蝶々夫人」(演奏:スイス・ロマンド管弦楽団)、トリノ王立歌劇場の2010年「ピーター・グライムズ」、2012年「カルメン」、2015年「フィガロの結婚」などがある。
国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者を務める。「ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より>(ベルリン・ドイツ交響楽団)」「ベートーヴェン:交響曲第5番〈運命〉/シューベルト交響曲第7番〈未完成〉(ベルリン・ドイツ交響楽団)」「佐渡裕 ベルリン・フィル・デビューLIVE」などCDリリースは多数。最新盤はトーンキュンストラー管弦楽団を指揮した4枚目のCD「シベリウス:交響曲第2番/フィンランディア」を2017年4月にリリース。著書に「僕はいかにして指揮者になったのか」(新潮文庫)、「僕が大人になったら」(PHP文庫)、「棒を振る人生~指揮者は時間を彫刻する~」(PHP新書)など。
              <佐渡裕オフィシャルサイトより転載

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