「新聞って、悲しい記事の方が多いんです。そんな記事がたくさん載っている古新聞を材 料にして活動をしていますが、悲しい記事が載っている新聞が回り回って、笑顔の材料になればいいなと思っています。」
『新聞女』こと西沢みゆきさんにワークショップの会場でお話しをお聞きした。
8月29日~30日、西宮阪急で行われた『子育て文化祭』で新聞で作ったロングドレスを身 にまとった西沢さんが小さい子供達と話しながら子供と一緒に手を動かしていく。見る見るあいだに可愛いレディーが誕生する。
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「何色が好き??」
「そうなの~~、青色が好きなのね~~」
傍に積み上げられた新聞から、青い色を探して切り抜いていく。
「こうしてね、端っこをつまんでねクルクル巻いていくのよ~~。そうそう!上手ね!!」
あっという間に大小の青いバラの花が完成!!
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次はスカート。「長いスカートがいい?? 短い方が好き??」
「そうよね~~。短い方が可愛いいわね~。」
西沢さんが青い写真のある新聞を手に取ると小さな女の子の顔がパッとほころぶ。
こうして新聞のドレスを身にまとった小さなレディが誕生していく。 なんとも微笑ましくって、笑顔になるイベントだ。
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西沢さんが『新聞女』として作家活動を始めたのは2001年。
「福井の今立現代芸術紙展に応募することになったんです。嶋本昭三先生の『人のやらな いことを!!』の教えが頭にあって、即興でマネキンに新聞のドレスを着せた作品を作ったところ、それがその時の最高賞を受賞したんです。他の皆さんは二年に一度のこの展示会のために時間をかけて作品を作られるのですが、私は搬入の日にその場で新聞ドレスを作ったんです。」
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西沢さんは西宮で育ち、市立西宮高校から関西女子美術短期大学(現・宝塚大学) のファッ ションデザインコースに進学。
そこで出会ったのが、美術集団「具体美術協会」の創設メンバーでもあった嶋本昭三さん。 (嶋本昭三さんは2013年に亡くなられたが、今も甲子園口にアトリエがあり活動は続いて いる)
「嶋本先生に出会ったのは衝撃的でした。私は小さい頃は引っ込み思案で、新聞紙などをつかって、おとなしく遊んでいた目立たない女の子でした。でも心の中に『表現したい!!』という思いはあったんです。先生に出会ってやっとその自分が出せました。」
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西沢さんがすごかったのは、その展示会の受賞会場でのこと。
「スピーチを・・・って、言われたんですがそんなの考えてもいませんでした。なので、 目の前に来賓がずらっと並んでおられるその舞台で、今度は新聞のドレスを作りながら身にま とったんです。皆さん本当にびっくりされていましたが、出来上がったら大きな拍手をいただきました。」
3分ほどのこのパフォーマンスと作品が評判になり『新聞女』として国内のみならず、フランス、イタリア、韓国、台湾、ウクライナ・・・と活動の舞台は広い。
日本でやる時は英字新聞が喜ばれ、海外でのパフォーマンスでは日本語の新聞が喜ばれるようだ。
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「新聞って結構ハリもあるし、強い紙なんですよね。最後はゴミになる紙ですが、たくさんの笑顔が生まれていくんです。本当に楽しいですよ~~。」
ワークショップの間という時間だったにもかかわらず、明るい笑顔で、テキパキと答えてくださった西沢さん。
引っ込み思案だったなんて信じられないが、人にはそれぞれに転機 があるんだなと思った。
新聞のハットとドレス、手には新聞で作った花束、そして靴も!!
笑顔が素敵な新聞女さんとの出会いとなった。
この秋には『芸術散歩2015~ROKKO MEETS ART』が、9月12日~11月23日まで六甲山の あちこちで繰り広げられるが、そこにも参加される。
また、11月には再び西宮阪急での展示も企画されているという。
どちらも、ワークショップや会場などに関しては、それぞれのホームページでご確認ください。
- プロフィール
- 1968年、兵庫県生まれ。
- 1988年、関西女子美術短期大学(現・宝塚大学)卒。
- 在学中、現代美術作家の嶋本昭三に師事。
- 2001年、福井県今立現代芸術紙展に新聞紙でできたドレスを出品、最高賞受賞。
- その後、古新聞を使った作品を数多く手掛け「新聞女」を名乗る。
- フランス、イタリア、韓国、台湾、ウクライナなど、世界各国でパフォーマンス。
- 2006年「バー新聞女」開業。大学、専門学校などで非常勤。