久保町にある、通称「交通公園」のスカルプチュア(街並みに模した石のオブジェ)の改修が少し前から始まっている。
最初は、業者による塗直しかな???と思って見ていたが、進捗状況や色遣い・お店の選定などを見ていて「どうもそうではなさそうだ。」と思っていたが、大手前大学の『色』をテーマに研究されているゼミ活動と知った。
学生さんも含んだゼミ活動・・・ということで、新型コロナ感染拡大の状況に左右され、なかなか予定通りに進められなかったようだが、久ぶりに再開というご連絡をいただいて現場に行ってきた。
3年ほど前から始まったこのゼミ活動は、最初は学生たちが実際に街を見て歩くことから始まったという。
どんな店やサービスがあるのか??
今から50年を見据えてどんな施設をここに作ったらいいのか??
子どもたちへの影響や、子供を育てる方々への支援の視点も入れて改修を始めたという。
もうすっかり剥げ剥げ何だったのか分からないものもあった。
市役所に行ったり、地域の方々にお聞きしたり・・・・・。
いろんな資料も探しながら、でも最終的には、子供たちに残したいもの・・・ということで改修が進んできている。
テーマは『いろのチカラで子育て支援♪♪』
いろゼミの山下眞知子先生にお話を伺った。
■このプロジェクトを始めることになったきっかけは??
もともと環境色がヒトに及ぼす影響というのが研究テーマで、それと同時に20年来「いろのチカラで社会貢献!」というスローガンで実験や実践を行い研究し続けてきたわけですが、その一環で西宮市の小中学校のトイレの色彩改修をゼミ活動として8年ほどやっていました。
学生に学外活動をさせると学内では学べない学びが保証できます。
オファーのあった学校のトイレの色彩改修が一通り終了し、地域の子どもや高齢者に視点を向けた時「公園の色」ということに至りました。
最初は公園トイレに着目し、目立たないように作られている公園トイレに色を吹き込むことで「防犯」を考えていましたが、トイレの外内装を塗装するのは足場もいるし、塗装中の使用禁止にタイムリミットがあり、学生活動としては様々な点であきらめざるを得ず、西宮中の公園を半分くらいリサーチした時に久保公園と出合えました。
昭和40年代当時のままの公園の建物に模したスカルプチュアも、朽ちて薄汚くうっすらと残る元デザインも昭和時代のシュールさが残り、今の時代感から乖離していると感じました。
50年残ってきたものなので、今後50年残すことを考え、何のお店に改修すればいいのか、そこからゼミ活動が始まりました。
ここで活動していると、若いイクメンやママと出合えることで、学生たちも10年後のあたりまえの暮らしをイメージすることが出来ます。
大学は知識を身に付けて就職にたどり着く通過点ということよりも、その学生自身の大人としての当たり前の生活に気付かせる役目を担っていると私は考えています。
■このプロジェクトに参加されている方は??
私を含め大手前大学3年生通称「いろゼミ」のメンバー31人と、15年近く前からボランティアで塗装技術を学生に指導したり材料手配をお願いしている建装オガワの小川三太社長です。
■いつごろから始まっている??
3年前から始めています。
今年は公園内の、スカルプチュアというのですが、街並みに模した石のオブジェが仕上がります。
あと、周りに11基のベンチがありますので、完全完了は来年度になると思います。
■このプロジェクトにかける思いは??
「いろのチカラで子育て支援」です。
色自体は何も語りませんが、色は人の何かを呼び覚ますチカラを持っています。
複雑で物騒で難しい社会になっている今、社会的弱者である子どもや高齢者、それをサポートする若い親世代の色スポットになれば、見守る眼も増え防犯も推進でき、若いファミリーの居場所にもなると思っています。
その光景を横目でほほえましく見守る高齢者が、周りのベンチで日向ぼっこをしている・・・そういう地域貢献を目指しています。
「いろのチカラで社会貢献!」です。
■一番注意されていることは??
1つ目は色彩面です。
小さい子どもに分かりやすい色、公園全体の「色」のバランスには気を付けています。
例えば隣同士・向い同士のスカルプチュアで使う色がバランスよく配置されているか?
小さい子どもに分かりやすい色は6色クレヨンの色なのですが、赤一つ青一つをとっても、私自身のこだわりもあり、明度や彩度を少し落とし気味にして公園の自然とマッチするように考えています。
2つ目のデザイン面では、子どもの世界の中にある「お店」であることです。
50年後はわかりませんが、50年後まで残っていてほしい「建物」であること。
市役所・郵便局・交番・消防署・病院・動物病院・学校・球場・酒の街西宮を象徴する酒屋・音楽ホール・図書館。それ以外は、小さい子どもが体験して理解できるだろう花屋・ケーキやアイスクリームショップ・ピザ屋・パン屋・果物屋・文具店・スーパーマーケット・玩具屋・美容室。
そしてコインランドリーやガソリンスタンドなど生活に密着した対象をデザインにすることです。
文字に興味を持ち始めた幼児にもわかりやすく、店名はひら仮名表示にしています。
3つ目は学生との協働での対話です。
どの箇所のスカルプチュアも私の手が入ります。つまりお手伝いです。
色を創ったり細かいデザインを描いたり・・・。
教員として、指導指示するだけの役目ではなく、学生と共に創り上げる共感・協働を重視しています。
■作業中に出会ったエピソードなどあれば教えてください。
遊びに来ている子どもたちからの質問攻めにあいます 。
「 何してるんですか?」から始まり、 参加したそうにずっと見ている子供がいます 。
「 やりたいね」というと、嬉しそうな顔します。
また文具店のスカルプチャの背面に若いイクメン 、表面には幼児が居て、スカルプチュアに向かって「 ケチゴム....クダサイ」と、お店屋さんゴッコをしてい た り 、 7月に新幹線を700系レールスタ ーにした時、テツオタ・・・のお父さんや男の子がその電車知識を披露してくれたり。
駅が出来上がった時に駅のベンチに学生を座らせ集合写真を撮っていると5~6人の小学生たちが周りに来ました。
学生たちが「 君らも入る?」と声をかけると 「 や った ぁ!」と言って喜 んで入ってきました 。
「 写真くれる ?」 というので「 写真どうするの?」という と「 自慢する!」「 誰に?」「 学校の先生!」 と・・・・。
活動中には子どもや親、お年寄りにまで「ありがとう。キレイにしてくれて」と声をかけられます。
「しんどくてキツイけどホントそれが嬉しかった!」とゼミ活動報告会では皆が口をそろえて言います。
ヒトから「ありがとう」といわれることは、ヒトに究極の幸福感をもたらすのだと学生には話しています。
親も小さい子ども、生意気になってきた子供もみな素直に、「ありがとう」と発する場を提供できて、私たちが逆に幸せを戴いています。
山下先生のお話では、学校の外に出る活動は学生を大きく成長させるという。
公園はこの日も、秋空の下多くの子供たちや大人で賑わっていた。
「きれいになったね!!」だけではない交流が、きっとこの公園を見守る人を増やしていく♪♪