大手前大学と大手前短期大学の学生が学内オーディションを受け、生まれて初めてのミュージカルに挑戦している。
上映は、来年の1月17日。場所は尼崎のピッコロシアター。
阪神淡路大震災で大学の本館が倒壊すると言う大きな被害を受けた大手前大学で、震災の年に実際に行われた地域の人たちも巻き込んだ復興祭の実話を基にストーリーを仕立て、大手前大学の客員教授でもある塩屋俊監督がプロデュースして10ヶ月稽古に励んできた。
<12月13日の大手前ルネサンス「あの空をこえて」記者発表会>
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現在、大手前大学のある場所は元々福井理事長の生まれ育った場所。そこにある大学(当時、大手前女子大学)の校舎が倒壊した現場で呆然と佇んでいた時、同じように壊れた校舎を見つめる近くに住む現役の女子大生に気づいたと言う話が、今回のミュージカルのきっかけともなった。
その女子大生は、その年の5月に行われることになった「夙川復興祭」の実行委員となり地域の人々も巻き込んだ大きな楽しいイベントとなった。当時はメディアにも取り上げられたが、その事はだんだん忘れられ、今の在校生は震災当時幼児だった世代で震災も殆ど覚えていない。
<震災当時の校舎の様子>
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こんなエピソードを聞いた塩屋監督は「学校としてきちんと語り継ぐためにもドラマにするべき」と。それもハードルは高いが難しいミュージカルに仕立て、学園祭ではなく地域の人たちにも見てもらう発表の場とする事に意義があると強く提案し、来年の1月17日の上演日が決まった。一つの授業という事で学生を集め、授業を受けるためにはオーディションに通らねばならないという面白いことになった。
人前で歌ったこともない、演技をしたこともない学生を指導してきたのは、今回の演出を担当する佐渡山順久さん。(俳優・株式会社ウィルドゥ)「イヤ~、全くの素人ですから最初はどうなるかと思いましたね。本当にいろんなことがありましたが、理解し始めるとどんどん吸収して行きましたね。若いから早いです。本番まで後一ヶ月ほどですが楽しみですよ。期待していてくださいね。」
<妥協せず学生に高みを求める演出の佐渡山さん>
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塩屋監督が大手前大学の客員教授に就任したのは今年度から。元々は、大手前大学が映画「ふたたびswing me again」のロケ地の一つとなったことがきっかけ。JAZZや映画にも造詣の深い福井理事長と大いに語り合い、大手前短期大学60周年の節目にこうした大きな動きとなった。
そうして、動き始めたのが今年の2月。阪神淡路大震災のことを語り継ぐためにと取り組み始めたこのミュージカルに、学生達が本気になったきっかけの一つにもなったというのが3.11の東日本大震災。18名の出演者を代表して記者発表の場に立った4人の学生達は「あの映像を見たとき、改めてここで起こったことに強く関心を持ちました。」と振り返る。
その日の稽古はクライマックスに近いシーンの一つだったが、学生達の本気がその稽古場に満ちていた。「プロってすげぇと思った!!」と話してくれた学生達が、この10ヶ月でどう変わって来たのか・・・それが、なんとなく感じられるような熱い稽古場だった。この空間にいた経験はきっと将来の大きな力となるだろう。今、後一月に迫った公演を前に、学生達も「震災復興の支援にしたい!!」と最後の仕上げに熱が入る。
稽古場の様子を写真でご覧下さい。
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記者発表に来られた4人の学生さんに一番見て欲しい場面や台詞を教えて欲しいとお願いした。
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<野島駿輔さん(圭役)>
最後の方で「やりたい事ができるうちは何が何でもやるべき」という言葉があるんですが、今の日本の若い人たちに伝えたいと思っています。
というのも、僕もついこの間までは「頑張る人」を斜めから見ていました。それは劣等感の裏返しだったんです。
そんな自分を変えたいと思ってこのミュージカルに応募しました。正直ムチャクチャつらいけど、ムチャクチャ楽しい毎日です。
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<高木慧一さん(七海役)>
劇のあらすじに関係するので詳しくは言えないのですが、七海が最後に主人公に向かって言う台詞の所をぜひ見て下さい。
このミュージカルには先生の勧めで参加しましたが、知らない世界に飛び込んで、とても難しい日々の中で燃えている自分をひさしぶりにに感じています。本当に貴重な経験をさせて頂いています。
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<吉野有紗さん(容子役wキャスト)>
容子という登場人物は、家族を亡くしているのに明るく振る舞う子なんですが、最後の方で自分の本当の気持ちを告白して崩れてしまうシーンがあるんです。ぜひ、そこを見て下さい!!
昔、のじぎく国体の時に 式典前演技をしたことがあるんです。それを偶然、塩屋監督が見ておられ「とても感動した!!」と言って下さって、演技が人を感動させるんだと知りました。このミュージカルが多くの被災者の方々への応援になればうれしいです。
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<峰松布美さん(容子役Wキャスト)>
悲しい事を乗り越えて、容子が前を向くシーンがあるんです。そこで言う「でも、もうあの子はそのギターを弾けないから、これからは私が代わりに弾かなきゃ。あの子の分も・・・」という台詞が好きです。
今回の経験で、勇気を出して挑戦したら必ず何かが変わるし、何か得るものがあるという事が実感でき、自信を持った自分がここに います!!
詳しいストーリーは言えないが、今の世界と亡くなった人たちの世界が交差するような展開になっていると言う。
「すこし複雑な展開ですが、人の絆を感じて頂けたらうれしいです。今回の震災でも多くの方々が突然引き裂かれてしまいました。大切な人は、亡くなっても生きている人の心の中に必ず生きています。」とジェネラルプロデューサーの岩崎宏非常勤講師。(岩崎宏さんのインタビュー記事は旧サイトで!!)