泥が入っているから虫が喰わなくて強い『名塩和紙』

名塩和紙

名塩は江戸時代には『名塩千軒』とまで言われた紙漉きの里。
しかし今では2軒だけとなった。

一軒は箔打ち紙の生産。すべての種類の名塩和紙を作っているのは、谷徳製紙所だけになった。
人間国宝の谷野武信さんもご高齢になり、三代目となる息子さんの谷野雅信さんが名塩和紙・洪哉として紙を漉いている。

名塩和紙は、その始祖とも言われている、東山弥右衛門が始めた製法。
そのあたりのことは、水上勉氏の「名塩川」という作品にもなっている。

その名塩和紙の特徴は何と言っても、名塩で取れる泥が入っていること。
泥(凝灰岩)を砕いて水で溶いたものが漉き込まれている。
その為に湿度の変化に強かったり、虫や熱にも強い紙となり、国宝級の建物の襖の下貼りなどに利用されている。
泥が混ざっているから、長い年月を経ても、虫がつかないしシミも出来ない。色も褪せないのだという。

名塩和紙のもう一つの特徴である、原材料として使われている雁皮(ガンピ)と泥が調和し、しっとりした独特な光沢もあり、長谷川等伯や尾形光琳も好んで使ったと言われている。

また、このあたりの岩盤では4色の土が出るという。
白(東久保土)、青(カブタ土)、黄(尼子土)、茶(蛇豆土)の4色と白土と黄土を混ぜた中間色、白茶(東久保土+尼子土)を加えた5色の色の名塩和紙ができる。

雁皮(ガンピ)は楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)と並んで和紙の三大原料の一つだが、雁皮だけは栽培が難しく、六甲山系に雁皮が多かったことから名塩和紙の原料となったようだが、近年は数がだんだん少なくなってきているという。

名塩和紙

名塩和紙は、屏風や障壁などに使われ、どんなものにも合うサイズとか、どんな間にも合う・・・と言うことから『間似合紙(まにあいがみ)』と呼ばれてきた。
様々な文献にも出てくると言う。「6尺のふすまはちょうど4枚で貼れるんです。」

ふすまや屏風などに使われ、名塩和紙の上に張った金箔はだんだん光が美しくなるのだそう。

また土の混ざった名塩和紙は強く、昔は全国各地の藩札としても使われた。

もう一つの重要な使い道が「箔打ち紙」。金箔を延ばす時に使われる。
1800枚ぐらい重ねて、それを三味線の皮の破れたもので包んで、その上から叩いて金を伸ばしていくが、その工程でかなりの熱を持つ。
ところが泥が入った名塩和紙だから、熱が伝わりにくく耐えられる。
そして箔打ちに使った後の紙は、とっても良質な油取紙として使われる。

少なくなってきた名塩和紙の里では、名塩和紙を広める為に『名塩和紙学習館』もある。
二階には名塩和紙の歴史などが展示されており、一階の実習室では紙漉き体験も出来る。(ただし、体験は事前予約制)

名塩和紙 谷野

投稿日時 : 2019-02-11 16:09:30

更新日時 : 2023-12-21 19:02:03

この記事の著者

編集部|J

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