昨年の9月から始まった「西宮街づくり塾」の第五回目は、神戸フィルムオフィス代表の田中まこさん。会場は甲南大学西宮キャンパス「甲南CUBE」。
小学校から大学までの半分ぐらいをアメリカで過ごした田中まこさんだが、思春期を西宮で過ごしたことで西宮への思いも深く、現在は西宮にお住まい。
阪神淡路大震災で大きい傷をおった神戸を元気にするために設立された神戸フィルムオフィスの立ち上げから関わりこれまで1700本以上の映像作品の支援を行ってきている。
この日は、人が好き!街が好き!!元気が大好き!!なまこさんの映画で作る地域づくりの秘訣を、NPO法人コミュニティ事業支援事業の理事長・東朋子氏のコーディネートでお聞きした。
「フィルムコミッションというのは行政の一つの部署で、ワンストップでサービスを無償で提供し、作品を選びません。映画を作るための仕組みではなく街のためにあるものなんです。」
映画やドラマなど映像に『街の今の姿』が残るという事が地域の人達にとって喜びとなり、そのロケ地が最終的に観光資源になれば良いとマコさんは語る。
「撮影を街の人が望んでいるんです!!」と言えるのが今の神戸。「でも、ここへ来るまでの道のりは険しかったですよ。」
道路封鎖で撮影をしたいと兵庫県警に行ったら「封鎖で影響のある全テナントの署名捺印を集めて下さい。」と言われ、路面のところだけでなくすべての事業所200軒の署名捺印を集めたこともあると言う。
「スタッフに熱意がないとできる事ではないです。一般の方は面倒がないなら映画に来て欲しいと思っているんです。ですから、その面倒な事は全部フィルムコミッションのスタッフがします。」
こうした努力をするのも、映画の誘致がその街にいろいろな恩恵を残してくれて、必ずその地域のためになる事が分かっているから・・・。
「最初は分からないんですが、例えば夜中から朝までその一角の店をあけてもらって撮影します。そうして撮影を見守って皆が一つの事をやり遂げる一体感ができるんです。そうして街に連帯感ができます。私達としては、地域の連携がしっかり残っている所の方が話を持っていきやすいんです。
一回目は大変でも二回目、三回目とだんだんやり易くなり、10年以上の実績を積んできた。
映画ともなると、100人以上のスタッフが長期で来る。その人達の宿泊、飲食、そして製作のためのいろいろな職種・・・などなど、映画を撮影する所にお金も落ちる。なにより、そこの風景がその映像によって後世に残っていく。
「神戸の場合、その風景が神戸として 出て行く事は少ないんです。映画の場合『そこでしか撮れないからそこで撮る』か『そこが撮りやすいから撮る』場合の2つなんですね。神戸は殆どが後者と言うことになります。」
映画のドラマやロケ地になった事を最終的には観光資源にしたいとまこさんは話す。「そこにずっと住んでいると、その街にある『宝』に気づいてないんですね。街を好きになる第一歩は街を知る事!!西宮に帰って来た時『ただいま!!』と言いたくなる風景をみつけて欲しい。」
それぞれの街には必ず懐かしい風景があるはず。 小さい子ども達にその感覚を持って育って欲しいから、小さい子どものいる家庭はできるだけ自然の中で子どもを遊ばせて下さいとまこさんは言う。「これだけ素敵な自然が西宮にはあるんです。よく通った裏山、よく登った木・・・大人になった時、懐かしく思い出すような過ごし方をして欲しいですね。」
きれいな所ではなく、生活感のある所が魅力あるロケ地だという。そしてその風景を大切に思う気持ちがその街を美しくする!!
子どもの時に見た、サウンド・オブ・ミュージック でオーストリアに行きたいと思ったまこさん。今、そのまこさんが神戸を日本の映画ににはなくてはならない場所に育て上げている。
「街を元気にするというのは、その街に住む人たちが元気になる事!!だからきちんと仕事ができる街にしないといけないんですよね。」
映画を通して街が元気になる様子を 、かつて神戸で撮影された「GANTZ」のプロモーションビデオも見ながら分かりやすく教えていただいた。