通称「高野連」…日本高校野球連盟の事務局は大阪の西区江戸堀にある。
高校野球のメッカが甲子園球場であり、春・夏にはここで大会が行われるのだから、関西にあるのは当たり前のことかとも思うが残念ながら西宮ではない。
しかし、甲子園球場のある街、西宮のポータルサイトとしては取材しないわけにはいかない・・・と、高野連の事務所(中沢佐伯記念野球会館内)を訪問してきた。(取材:2008年3月)
歴史を支える人たちの気概
「たくさんあるスポーツの連盟で、関西に事務局があるのはうちだけなんですよ。他はみんな東京ですからね。こだわってますよ…」と当時の田名部和裕参事。
時には、いろいろ世間から批判もされる高野連だが「なぜ野球だけが…?とも言われますが、昔から野球は注目を浴びてきたスポーツなんですね。ですから、やはり自主独立でフェアにすると誓った組織はきっちりとしたルールは作らないといけないんです。長年の伝統の本流はきちんと守りたいと思っています。野球を通して勉強してもらう場であり、選手本位の高校野球を私たちが黒子でサポートしていきたいと思っています。」
戦前には、野球統制令という法律があったそうだ。その法律を撤廃してもらった組織としての大きな責任があったことを知った。
訪問の記念に玄関で、「西宮流」のマスコット「ぽっつ君」もいっしょに撮影
宇宙に行った高野連の旗
ご自身も球児だった田名部さん。鷹匠中学のときに近畿大会に出場した経験があるそうだ。関大でのマネージャー時代はメディアのアルバイトなども経験し「ちょうどその時に出来たこの中沢佐伯記念野球会館のボイラーマンとして就職することになったんです~(笑)」
冗談も交えながら笑顔でいろいろ話していただき、館内も案内していただいた。
「ここにある、この旗やこの野球ボールは若田光一さんと一緒に宇宙に行ったんです。この旗は船底に入っていたらしいんですが、このボールは宇宙船内でキャッチボールをしたんですよ。」
その時の記念写真がボールと一緒に飾ってあった。宇宙船の艦長がやはり野球の選手であったと言うことから、キャッチボールというようなパフォーマンスが実現したらしい。
試合球は審判委員が丹念にチェック
高野連の上階は宿泊施設にもなっている。
「昨夜は抽選会に出席するキャプテンが泊まったんです。」とのことで、洗濯に出すというシーツなどが山積みになっていた。大会期間中は、全国から集まる審判委員の方々の宿舎にもなるそうだ。
会館の地下のホールの一角の床が取り外せるようになり、下に大理石が埋め込まれている。その真上には機械が取り付けられており、ここで審判委員の方々が一個ずつ反発や円周の長さ、ゆがみなどのチェックをする。
春で100ダース、夏は150ダースの試合球がここで最終チェックされ封印される。
「最近は、ファールボールをプレゼントするようになりましたから、一大会で50ダースくらいは余分に必要になりました。でも、幸運にもキャッチできた人がそれを宝物にしてくれたらうれしいです。」
時代は変わっても優勝旗に寄せる球児の思いは同じ。
春と夏の優勝旗が飾られている。
春は1回大会から34回大会まで使われたもの。
夏は40回大会まで使われたもの。
生地はすれ、飾りの房もぼろぼろだがこうして広げてみるとその大きさに驚く。
この優勝旗を持って一周するときっと重いだろう。
2000年の夏に全国の高校野球連盟加盟校へ甲子園の蔦を送ったとき、各校の記念の写真や寄せ書きなどを書いてもらったものが「21世紀へ伝える甲子園へのメッセージ」として大切に保管してあった。
記者が母校の名前を言うと、大阪の高校の中から探して見せていただけた。
昨夜ここに止まったという各校のキャプテンも、こうして自分の学校を探したのだろう。
甲子園の地元、西宮のみなさんに感謝
今年は、春が80回、夏が90回の記念大会の年。この歴史を支える裏方の仕事はさぞ大変だろう。
「やはり、大勢の人が集まるわけですから地元の方には本当にご迷惑をおかけしていると思います。たくさんの苦情もいただきますがゴミや車の量などには本当に気をつかいます。」
大会期間中は、70ヶ所に及ぶ出場校の練習場の確保や地方から来る応援団のバスのルート決めなど裏方の仕事は多い。「組み合わ抽選が終わったら、試合の時間も考えて練習時間も斡旋します。」
最近、西宮のJCの方々が中心になって“夏の開会式の時の人文字”や大会期間中の出場校のプラカードと一緒に記念写真が撮れる“シャッター押し隊”などの活動が始まっている。
昨年の夏には、記者も西宮流のスタッフとして人文字の中にいるという経験をしたが、実際に体験するとその日のニュースの人文字の画面を印象深く見入った覚えがある。
「地元の人たちと共同作業することが出来て本当にうれしいです。人文字を作るというのは家族で一緒に経験できるボランティアでもあるんですね。参加することで、より身近に感じていただけるとうれしいですね。」