2024年に第171回芥川賞を「バリ山行」で受賞された松永K三蔵さんは、西宮育ちで、関西学院大学文学部の卒業生、今も市内の山手にお住まいだ。
芥川賞の「バリ山行」の作品の中にも、甲子園口や甲陽園、鷲林寺町などという西宮の地名もでてくる。
作品の中に知った地名が出てくると、一気に作者との距離が縮まるような気がするのは筆者だけ??
その松永さんが、西宮市文化振興財団主催の「西宮文学案内」で講演されることを知って、お話をお聞きしに行ってきた。
当日の講演会の内容をもとに、「純文学はおもしろい!」と言う松永さんの魅力の一端を書いてみよう。
芥川賞『バリ山行』/松永K三蔵氏の魅力
松永k三蔵というペンネームの由来を、会場の笑いもとりながら松永K三蔵さんのお話が始まった。
この日も、衣装はお馴染みの『オモロイ純文学運動』Tシャツにジャケット、頭には三蔵帽子。
「この衣装でないと、最近ではたまに『あれ?今日はいつものTシャツじゃないんですか??』って言われることもあります。」
とても真面目なお顔で話されているけど、とってもお茶目な一面が溢れてくるような気がする。

3歳から西宮に住んだので「ほぼ宮っ子です!」という松永さんは、14才までは本を読まない少年だったようだ。
「漫画が好きでした。そんな私が本に引き込まれたのが14才の時に母から渡されたドストエフスキーの『罪と罰』でした。とてつもない衝撃を受け、自分もコレを書こうと思ったんです。まさに中二病です(笑)」
それ以降は本の世界に入って、中央図書館がお友達になったという。
「中央図書館は、織田作之助さんの六白金星にも出てくる香櫨園浜もすぐ近いですしね。」

14歳で本を書こうと思った少年はやがて大人になり、就職した松永さんが本を書く時間を捻出したのは始業前の2時間。
2021年『カメオ』で第64回群像新人文学賞優秀作品を受賞。
「41歳でしたから遅いデビューだと思います。」
『カメオ』から3年後、『バリ山行』で第171回芥川賞を受賞。
あれだけメディアに取り上げられたから会社でも大騒ぎになったのではないかと思ったが、実際はそうではなかったようだ。
芥川賞受賞時には「オモロイ純文学運動」Tシャツにサイクルキャップの三蔵帽子という出立でメディアの前に立った松永さん。
「半年ぐらいはバレませんでしたね。」インパクトのある扮装が功を奏したようだ。
そして文学は「唯一、虚構(ウソ)であっていい『学』のつくもの」という松永さんの言葉に、改めて本の中に違う世界を見つけて引き込まれていった経験を思い返した。
オモロイ純文学とは
辞書によると、純文学は『純粋な芸術的感興を追求しようとする文芸作品。大衆文学に対して言う』(日本国語大辞典)とある。
しかし松永さんは純文学の定義は自由でいい、という。
その上で、松永さんが思う純文学は、私たちの生きているこの世界を書くことだという。
約束事のない、ありのままの世界。
ナンデモアリの世界。
その表現方法も自由。
だから面白くなくてもいい。
そしてもちろん面白くてもいい。
そんな自由な純文学を、シンプルに「オモロく」読めるものがオモロイ純文。
「オモロイ純文運動」とは純文学をひろめる運動なのだ。
今回の講演は『オモロイ純文学』運動を提唱している松永さんの、視点を教えていただいた貴重な時間だった。
「阪神間文学ブックリスト」by ポラン堂古書店
この日の会場では、夙川のグリーンタウン内にあるポラン堂古書店が作成している”阪神間文学ブックリスト”が配布された。
A3三枚にびっしり書かれたリストには、西宮を中心に作中で取り上げられた場所の書かれた本が紹介されている。
「リストを見て、本を読んで、出てきた場所を歩いてみませんか??」と松永さんが誘う。
そんな心豊かなことが身近で体験できるのも、西宮の宝のような気がする。
充実した”阪神間文学ブックリスト”が配布されているポラン堂古書店は、その店名からも想像できるように、宮沢賢治の研究者でもある店主と、小説やマンガに想いを寄せる仲間たちが運営する本好きのための空間。
今年で開店4年目になり、小説を中心にさまざまなジャンルの本を扱う古書店。

気になる本を座って選んだり、読書に関する相談にも乗っていただける。
年々少なくなる本屋業界で、貴重な場となっている。
場所:夙川グリーンタウン2階(阪急夙川駅前)
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月・水・金 (ただし急なお休みがあるのでSNSで確認がおすすめ)
X https://x.com/polando_books

























