「自分にとって、どうプラスの気持ちに持っていけるかが重要だと思います。」
「今の代打は、若いときの代打とは違いますからね・・・。いつまでたっても慣れないポジションですよ。」
と話して頂いたのは、代打の神様と言われる阪神タイガースの桧山進次郎選手。
「代打って言うのは、毎回すべてが違う場面ですから、ある意味誰にもできない経験をさせてもらっていますよ。後になって振り返ったとき、いい経験だったと思いたいですから・・・ね。」監督やチーム全員、そしてタイガースファン全員からの大きな期待を一身に背負う心境をこんな風に語ってくれた。
「いつまでも慣れることは出来ませんが、野球選手と言うことだけでなく一人の人生に置き換えたとしても、きっと後になって役に立つと思っています。」
「野球選手というのは打つだけでなく、守って走って全部やってこそだと思うんです。でも、チームの事情によって監督から『やれ!』といわれれば自分の気持ちとは関係なくやらないといけないこともあるわけですから、それをどう自分にとってプラスの気持ちに持っていけるかが重要ですね。」言葉を捜しながら、真摯に丁寧に答える桧山選手。スポーツマンらしくさわやか。
子どもたちの図書費用にと100万円を西宮市に寄付された桧山選手の記事がきっかけで、ホテル阪神でお話をお聞きすることができた。
現在、西宮市民である桧山選手は、阪神に入団以来その殆どを西宮で暮らしている。
「北の方から帰って来た時、越木岩の辺りまで帰って来た時、街のすぐ向こうに海が見えてくるでしょう?? あの風景がとっても好きですね。」好きな西宮の風景の一つ。西宮を終の棲家と考えて家も建てられたという。
本拠地の甲子園球場から車で20分程の距離。その自宅までの車の中がとっても大切な時間だと桧山選手。「音楽を聴いたり、ニュースを聞いたり、信号で止まったり・・・あの距離の運転の時間が、球場の自分を自然に変えてくれるんです。」
「うちの奥さんはあまり野球のことに詳しくないので、家では野球のことは話題になりませんね。」
いつ出番が来るのか分からない代打。
「ネクストバッターボックスに入って次を待つということがないですから、以前のようにルーティンでする動作はなくなりましたね。」
代打を告げられた時にテンションを一気に上げて行くのがはやり難しいと言う。
「上げ過ぎてもいけないんですね~~」
失敗した時、次に打つまでどうしてもマイナスイメージを引っ張ってしまうらしい。
その次のチャンスが、すぐ翌日に来るのか??何日も後なのか??本当に気持ちを持ち続けるのが大変だと率直にお話していただいた。
そんな桧山さんがサインなどでよく書くのは「気」や「感」と言う文字。
気持ちを持ち続ける。自分の感じることを大切にしたい・・・そんな想いをこめて書くと言う。
代打を告げられバッターボックスに入るときには「打ちたい!!」と強く思う。見逃しだけはやめようと心に決めているが、その場でいかに腹を据える事ができるかがあの短い時間に求められる。
「バッターボックスに入ったときに、ピッチャーが大きく見えるかどうかでなんとなくその時の自分が判断できるんです。」
野球をする場としてはやっぱり外のグラウンドの方がいいと言いながらも「野球場で一番すきなのは東京ドームですね。あそこは皆がそう思うんじゃないですか??やっぱり飛びますから・・・(笑)」
「土のグラウンドは野球をうまくさせてくれますね。でも、甲子園球場の浜風には悩ませられていますよ。あの浜風の球場で年間一番多く戦うんですから・・・(笑)」
現在の代打の経験がきっと将来の自分にプラスになると何度も話してくれた桧山さん。それは野球人だけでなく、思い通りにならない人生を送る多くの人へのエールでもあった。
これまで、甲子園球場のある街「西宮」の情報を発信して来ているが、タイガースの選手を取材させていただけたのは初めて。桧山選手をきっかけに、タイガースの選手コーナーが始められたらなぁ…と一人勝手に思っている。