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万葉うたがたり 岡本三千代さん

万葉うたがたり 岡本三千代さん



日本最古の歌集、万葉集。この日本の文化のルーツともいえる和歌に、音楽をコラボさせて世に送り出しているのが、岡本三千代さん。ユニークな活動で全国の万葉ファンからひっぱりだこの岡本さんにお話を伺った。

万葉うたがたり 岡本三千代さん

万葉うたがたり 岡本三千代さん

【プロフィール】
甲南女子大学文学部国文学科卒業。在学中に文化功労者である故犬養孝氏に師事、万葉集を学ぶ。その後「万葉の道」の著者、扇野聖史氏の出会いがきっかけとなり万葉集に作曲。「万葉うたがたり」という独自のスタイルで昭和57年より演奏活動を開始、今日に至り、一昨年25周年を迎えた。CDや楽譜など作品集も制作。また講座・執筆など活動範囲も広がり、自治体と協力して、ふるさと作りの手伝いや、万葉ロマンの世界を広める活動をしている。犬養万葉顕彰会会長・明日香村観光開発公社理事を拝命している。

犬養孝先生と出会ってなければ、今の私は無かったかもしれません

 小さい頃から音楽を志していた岡本さん。音楽大学を目指して日々レッスンに励んでいたが、結局は中・高と通った甲南女子大文学部国文科に進学した。

 ある種の挫折感を味わったらしい。ところが、そこで大きな人生の転機となる出来事が岡本さんを待っていた。ちょうど大阪大学から万葉風土学者の犬養孝さんが赴任してこられたのだ。

 犬養さんの分かりやすく楽しい講義を聴き、感銘を受け、3年生で犬養ゼミに入り晴れて師弟の縁を結んだ。犬養さんの語る万葉集にどんどん引き込まれていく自分がいたという。万葉旅行と称して行くゼミ旅行などでは、必ず「犬養節」といわれるメロディ付きの和歌を唱和するのが当たり前だったが、それがなんと、今の岡本さんの活動に結びついていくことになった。

万葉集の歌にメロディーを音楽の道をめざしていたことが役に立ちました

 大阪大学でも教鞭をとっていた犬養さんにはユニークな教え子がたくさんいたようだ。その中でも、当時福徳銀行に勤務していた扇野氏が、ウクレレを弾きながらアダモの「雪が降る」のメロディーで天武天皇の歌を歌うのを聴いて、岡本さんは強烈なカルチャーショックを受けたという。その感動は昨日のことのように覚えているとか。
 そんな扇野氏が、音楽の素養もあった岡本さんに作曲を勧め、大学4年のときに作ったのが「二上エレジー」。大伯皇女・大津皇子がテーマのこの曲が、犬養ゼミ最初のレポートであり、岡本さんの最初の作曲歌となった。
 勝手に自作で曲にして歌っていいのだろうか・・・と迷うこともあった。しかし、「それで万葉集がみんなの中に広がるのなら、それはいいことだと思う。」という犬養先生の言葉に力を得て活動へと繋がって行った。
 そのころにあった生駒のオービスという実験放送のゴールデンタイムになんとワンクール流れたらしい。音楽の持つイメージの力の大きさを認識したという。昭和57年ごろからは扇野さんと一緒の活動が始まった。

全国各地から招かれます。
万葉というのは日本人の心に響くのでしょうね

古代の衣装を思わせる華やかなステージ衣装。

今のうたがたりのスタイルになるまで、やはり試行錯誤はあった。難解な古語にメロディーをつけても外国語にしか聞こえず、内容を理解することはなかなか難しい。それでは・・・と、現代語訳した歌を2曲ほど作ってみたがやはり歌の持つ情感は伝わらない。そこで考えたのが、歌の間にかたり(説明)を入れ、内容を理解してもらうという方法。これが大評判で、以後このスタイルが確立し、今では「万葉うたがたり会」という演奏集団が出来上がっている。

万葉集で町おこしをしようと企画する全国各地から、万葉に関するイベントでは引っ張りだこ。優雅な衣装を身にまとい、情感あふれる「うたがたり」が始まると、会場はしばし古代にタイムスリップしたような不思議な雰囲気が漂う。
 作曲はもちろん岡本さん、素敵な衣装のデザインや製作はメンバーみんなで手分けして、楽しみながら進めるという。やはり女性のグループなので、新しい衣装を身にまとうときはウキウキするそうだ。

曲作りのネタは尽きません。だって万葉集は4516首もあり、たくさんのドラマがあるのですから

 自分の好きな和歌に作曲するのは比較的ラクで楽しいが、招かれた土地にゆかりのある歌を依頼されてうたがたりにするのはなかなか難しいらしい。
 「でも、作曲の切り口はたくさんあるんですよ。たとえば徳島などは万葉集の中に2〜3首しか出てきませんが、中に『眉山』をテーマにした歌があるんです。ちょうど映画の『眉山』が公開された頃でしたので、映画をイメージしたドラマを作り上げて歌にしました。」
 直接、その土地を詠んだ歌が無くても、4516首ある万葉集の和歌の中から、その時の公演に合うテーマを考えていくつかを選んでうたがたりに仕立てることもあるという。「たとえば、バレンタインの時期なら、恋歌ばかりを集めて曲にしたりとかね。曲の背景となるドラマ作りがまた楽しいんですよ。」

 昔、音楽の道に進みたかった岡本さんが国文学を専攻し、今こうして万葉うたがたりという新しい分野を切り開いている。まさに天から与えられた道だったのだろう。それを喜んで聴いてくれるファンがいるから、そしてまた、万葉の文化の無い土地にも新しい種を蒔く喜びがあるから、曲を作り続けている。

西宮は万葉集と非常にゆかりのあるところなんです。もっと知って、誇ってほしいですね

岡本さんの作品集 「恋歌」のCD、カセットテープ。このほかにも万葉うたがたりのコーラスピースなどもある。

 古くから文化の栄えていた西宮を詠んだ和歌は万葉集の中に10首もある。奈良の明日香、越中の高岡、九州の大宰府…などという土地と並んで「万葉故地」としてその地位は高い。
 西宮は「酒の街、西宮」だけでなく、もっと古く「万葉の街、西宮」ともいえる。犬養孝さんが住んでおられたという縁もあり、平成6年、西宮市は犬養孝さんの企画・実行による「西宮万葉フォーラム」を開催している。昭和63年には西田公園に万葉の植物72種を植え、犬養さんの歌碑が建てられている。

 西宮市でのフォーラムはそれ一度だけであったが、実はそれ以降も西田公園は万葉の聖地の一つとして、市内外の万葉ファンを喜ばせている。

 そんな西宮に歌語りの本拠地があるということは、とても意味深いことであり、岡本さんも地元にこだわった活動を続けている。(その活動に対し、西宮市から感謝状も贈られている。)しかし、他市で開催するときに比べて盛り上がりが少なく、やり始めて5年の今回を目処に、次回の開催地を再考しているという。「まあ、西宮というところはいろんな文化がたくさんあるからでしょうね…」と少し寂しそう。

小さな村に出向いて歌うこともあります。
万葉の世界を広めるのが私の使命ですから

 岡本さんの活動は、万葉集ゆかりの各地に広がっていて、奈良県の明日香村で毎年行われる「万葉の歌音楽祭」では審査委員長を務めている。
 また、11月1日には富山県の高岡市から感謝状が贈られた。市町村合併でのみ込まれてしまった小さな町や村に、エールを送り続けることも、自分の使命であると岡本さんは思っている。
 恩師、犬養孝さんとはまた少し違ったやり方で、万葉集をたくさんの人に広め、これからも愛される歌を歌い続けてくれることだろう。

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お知らせ

2008年1月22日(火)
甲東公民館にて10時より「万葉うたがたりコンサート」。(詳細は公民館ニュースで)


2008年3月15日(土)
フレンテホールにて、岡本三千代さん主催で、犬養孝生誕100年を記念したコンサートが開かれる予定。(但し、詳細はまだ未定)[/box]

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