猛暑の午後、今年も大勢の方が参加して浜脇古老の会が年に一度主催する「空襲を語り継ぐ会」が浜脇小学校で開かれた。
数年前にこの会のことは知っていたが、今年初めて取材に行ってきた。
これまでも知識として知っていたが、8月5日深夜から6日未明にかけての鳴尾・西宮の空襲のことを体験者の口から聞くと、知識だけでは得られないものが体に入ってくる。
同じ資料や写真でも、どこまでそれらに心を寄せられるかで違ってくる。
それは、その人の興味であったり、タイミングもあるのかもしれない。
浜脇 古老の会とは
「60歳で定年になった者たちが集まって、地域の歴史を学ぼう!!とつくられた会でした。そんな活動の中から、自分達の戦争体験を語り継ごう・・・と、毎年この日に開催することになりました。」と話してくださったのは、今の代表の枇杷絋一朗さん。
「1940年生まれの86歳です。実は、私は戦争当時は鳥取の田舎にいまして・・・。おまけに小学校にも行ってない年齢でしたから、私自身は戦争体験はほとんど記憶にないんです。」
「活動を始めて18年になり、戦争の経験を語れる人もどんどん少なくなってきました。」とおっしゃる枇杷さんが、今では奥様と二人で『浜脇 空襲を語り継ぐ会』を開催されている。

「代表をされていた方が亡くなって、一旦は『古老の会』は解散したんです。でも、年に一度のこの『浜脇 空襲を語り継ぐ会』を残したくって、今は家内と二人が、たくさんの方に支えられて続けています。私は、実は殆ど戦争体験がありません。たくさんの先輩のお話を聞いてきて、語り継ぐ!!ことの大切さを感じて、次にバトンタッチしたいと思って続けています。」
ビデオや写真を流したりするのは、会場となっている浜脇生小学校の有元校長先生が、サポートされていた。
西宮町の中心地でもあった浜脇地区も学校も、当然、大きな被害を受けている。
小学校の靴箱の横のピロティには戦争の遺構も展示されている。


戦後81年。
戦争中の体験を語れる人はどんどん少なくなっていく。
戦後65年に西宮市が作ったビデオ(西宮の記憶〜語り継ぐ戦争体験記〜)は、今では生の声が聞ける貴重な資料となっている。
そんなビデオを見た後、戦争中、小学校のすぐ南側に住んでいた「たまくん」の絵本の朗読の後、この日は4人の方の体験やお話をお聞きした。
原爆の数時間前にあった、西宮空襲の特性
この日、今年95歳になられるという小嶋さんが、当時、甲陽中学2年生だった学徒動員でのの阪神電車の線路補修などの体験談をお話された。
そんなお話の中で、西宮空襲の特性についても触れられた。
「戦争末期になると軍需工場などへの爆撃とは別に、住宅密集地を焼き尽くす作戦がとられました。戦争を早く終わらせるためでした。西宮町への絨毯爆撃もまさにそれでした。」と小嶋さんは話された。

油脂焼夷弾は、着弾すると油脂が飛び散り燃え広がる。
そんな焼夷弾を38個をまとめて一つにした弾を1500個以上搭載している飛行機が、130機飛来しての絨毯爆撃だったというから、もう逃げるしかなかったようだ。

現存する防空壕は岩盤などで作られた強固なものしか残っていないが、町の中で戦争末期に作られた防空壕は、適当な場所も少なくきっと簡易な物も多かったことだろう。
簡易な防空壕では役に立たない程の、集中した空襲だったこの日の空襲。
山の方へ、海の方へ、川の方へと向かって逃げた人たちの命は、本当にちょっとした運命の差としか言いようが無ったようだ。
鳴尾村から西宮町にかけて、8月5日深夜に始まり、6日未明まで続いた「阪神大空襲」(後にこう呼ばれるようになった)は、広島に原爆が落とされる数時間前の出来事だった。
「長引く戦争を。早く戦争を終わらせたい!!というアメリカの作戦で、あえて住宅密集地を狙う作戦が実行され、西宮町も焦土になりました。」一年毎に歳を重ねる中で、こうして年に一度お話されるその言葉を聞き入る大勢の人たちの中に、この日は、浜脇中学生数人の姿もあった。
「語り継ぎたい!」という枇杷さんの気持ちが、こうして18年続いてきた会をさらに前へと歩ませる。
1945年3月17日:神戸大空襲で神戸の西半分は壊滅的被害
3月19日:鳴尾村が初めて空襲を受ける
5月11日:西宮町への第一回空襲
この後、8月6日の鳴尾・西宮の空襲まで、鳴尾は8回、西宮は5回の空襲を受けた。
西宮神社の本殿も全焼したが、赤門は消火活動で無事だった。
語るのではなく、語り継ぐ
香櫨園にお住まいの渡辺さんは「戦後、阪神電車の窓から焦土になった西宮を見ました。父親から”よく見ておきなさい!これが戦争だ”と言われました。」と語った。
また、戦争を放棄した憲法を守ろう!と訴えられていました。


最後にお話された鳴尾の原田さんは「私は戦争を知らない世代です。昨年、鳴尾にあった砲弾の跡が残る橋の欄干が公園に保存されました。先輩の体験談をつないでいき、今、戦争をしている世の中のことを考えたいと思います。」
浜脇小学校で18年続いてきたこの活動は、きっと来年も開催されることだろう。
暑い夏の日だが、ぜひ参加して生の声を聞いてみて欲しい。























