つくづく『縁というものの、不思議さ!』を感じる展覧会に出会った。
鳴尾公民間のすぐ近く、武庫川女子大学の西門にも近い住宅地の中にコンクリート打ちっぱなしの5階建ての建物がある。
「武庫川女子大学 学術研究交流館」という名前の建物の、1階と5階が「武庫川女子大学附属総合ミュージアム」となっているが、5階では年に二度ほど学生も関わっての企画展が開催されてきた。
ミュージアムはそう広くないスペースなので、解説や説明文をじっくり読んで、丹念に見て回っても疲れずに鑑賞できるのがうれしい。
普段は人の出入りもそう多くはないひっそりした建物だが、企画展のある時には大きなポスターが玄関扉の前で迎えてくれる。
これまでも春と秋には、大学で収蔵しているものの中から展示がされてきたが、今回の企画『モノの棲み家 ヒトの棲み家』はちょっとユニークだと感じた。
この企画をされた方々のお一人・松山聖央さん(武庫川女子大学生活美学研究所)にお聞きした。
「主がいなくなりデータとなったモノ達を、美学(感性の領域)と人間がモノと出会う場である建築学の両方から見て、中田静さんの生活の一つの解釈に迫ろうとしました。例えばノートに書かれたお買い物リストにはところどころにイラストが描かれていたり、お庭の様子が書かれていたりもします。きちんと包装紙に包まれ紐をかけられた箱の外にも静さんのメモやイラストが添えてあったりします。こうして原寸大のモノがデータとなっていきます。今回の展示を見ていただくと、皆さんもどこか身に覚えのある共感ポイントを見つけていただけると思います。」
<企画展のチラシに書かれた説明文の一部>
昭和から平成の時代にかけて、大阪・美章園に暮らした中田静さん。
彼女の「自宅」には、膨大な生活財や日用品が残されていました。
主人(あるじ)亡きあとも存在し続ける衣類や食器、瓶詰・缶詰の食品類、それらをおさめる家具、造花やぬいぐるみなどの置物、仏壇にしまわれた戦死した兄との書簡ーーーそうした集合体を目の当たりにするとき「自宅」とはヒトの棲み家であるとともに、モノの棲み家でもあることに思い至ります。(続く)
モノがいっぱいある生活をされていた中田静さん。
会場入り口にある静さんの自宅模型では、モノのない建物模型と、静さんが暮らしていたモノに囲まれた模型の対比もおもしろい。
普通なら、静さんが亡くなったら「ただのゴミ」になってしまっていた膨大なモノたちが、縁あって武庫川女子大学附属総合ミュージアムの生活財資料として収集され、さらに「ヒトとモノの承認関係を手掛かりとする自宅環境を包括的に研究」されている方々の知るところとなり、今回の展示会が開催された。
静さんご自身も忘れていたかもしれないモノたちが、こうして研究の視点で展示されている。
当の静さんも知る由もなかった不思議な『縁』を感じながら、積み上げられている懐かしい砂糖の缶や箱、丁寧に書かれたお買い物手帳(?)、包装紙にきちんと包まれ紐がかけられた台所道具類、現地調査の時に撮られた写真などに見入ってしまった。
今回の展示の最後は「中田家の仏壇にあったモノたち」。
「長く続いている戦争がある時だからこそ、仏壇の中にひっそりあったモノ達が自宅から外につながっている様子に心を寄せて欲しい。」と横川公子ミュージアム館長は言う。
仏壇の中には、静さんのお兄さんが陸軍の幹部候補生だった頃からのモノたちがたくさんあったようだ。
ボルネオで戦犯として処刑される前日の書簡もあった。
戦争に巻き込まれてしまった一国民・一兵士の心情を思うと、ニュースで流れている戦火の映像がまた違った形で迫ってくる気がする。
『モノの棲み家 ヒトの棲み家』展は、7月12日(水)まで
企画展の公式サイトはこちら➡
チラシを見る➡
場所:武庫川女子大学附属総合ミュージアム(武庫川女子大学 学術研究交流館5F)
住所:西宮市鳴尾町1-10-21 電話:0798-45-3509
展示時間:7月12日まで 平日10時~16時半 土曜日10時~15時
(但し、6月25日(日) 7月9日(日)は10時~15時開館)
入場料:無料