思い出を語る市立西宮高校のプラカードガールOGたち
夏の大会の入場行進で、各校の名前のプラカードを持って選手を先導するプラカードガールの正式名称は、式典誘導係。
男女共学の思想により、男子だけだった高校野球の場にも女子の参加をということで1949年(昭和24年)の第31回夏の大会からプラカードを持つことになった。
当時の甲子園球場長が生徒の保護者であったため、西宮高等学校に白羽の矢が立ったとか・・・。
終戦直後の困窮で、まだ制服を作ることが困難だったが、全国大会にふさわしくと
純白の帽子、白いブラウス、紺のスカートをそろえ、胸にはピンクのバラをつけたそうだ。
その年の優勝校は、神奈川県立 湘南高等学校。
その時から、現在まで市西の伝統を背負い、また他校からの憧れを一身に受け、たくさんのプラカードガールが誕生した。
大会が近づくといろいろなメディアから取材されることも多く「姉妹で…親子で…」と話題にもなっている。
最近は、プラカードを持つことを夢見て入学する人もあるという。
2008年6月15日、マスターズ甲子園2008(第5回大会)に集まられたプラカードガールOGの方々に当時の思い出や今の気持ちをお伺いした。
しみじみと責任と誇りを感じます
今になって改めて「すごいことだったんだ~」と・・・
現在、市西のプラカードOG会の会長をされている浅谷為久子さんはこんな風に当時を振り返る。
「私は、2回目3回目を経験しました。でも、当時はね、何でこんなことやらなあかんのやろう?? 暑いし、早く終わらないかな~?などと、今思ったら不謹慎なこと考えてましたね。
だって、あの当時はこんなにテレビで高校野球が放映されるわけでもなく、まして運動部でもなかった私で先生の鶴の一声でしたからね…」
戦後、男女共学の世の中になってきたとき、男子ばかりの野球の大会に文字通り花を添えると言うことでプラカードを女子生徒が持つことになり、当時3校あった市内の高校のうち、前身が女子高ということもあって選ばれたようだ。
「それでもね、いざ当日になってプラカードを持って球場に入った時には、それまでの気持ちが一度に吹っ飛びましたね。
こんなにもたくさんの人の注目を浴びる大会なんだ…ってね。」
球場に入ったとたん、満員の観客の熱気や白いシャツに埋まって真っ白に見えた観客席に圧倒されたと言う。戦後、どれほど、この高校野球の再開が人々から待ち望まれていたかがうかがえる。
「それでもね~、今に比べたら出場校も少なく寂しいものでしたよ。その後、大会が続きテレビに映し出されるようになってから改めて、プラカードを持って歩くことの意義や責任を感じましたね。」
マスターズ甲子園のプラカードで、久々のドキドキ感を味わう
今年で5回目を迎た「マスターズ甲子園」。これは全国各地の予選を勝ち抜いて甲子園球場を目指す野球少年OBたちの熱い戦い。
2008年は6月15日に行われた。昨年から、改修に伴って来年までは父の日に甲子園球場で行われることが決まっている。「・・・・行進を見ていますと、ずいぶんお腹も出てきたなぁ~、年をとったなぁ~と思いますが、ここ甲子園は永遠の憧れの地であります。・・・・」と大会名誉会長の星野仙一さんの挨拶の一節。
いつまでも変わらない野球少年たちの憧れの場、甲子園球場。そしてその永遠の少年たちを先導する永遠の少女たちもまた、この甲子園には特別な思いを抱いている 観客席ではきっと味わえない独特の雰囲気を、この日集まったOGたちはグラウンドで実感したのだろう。
この年、マスターズの会場に集まったのは20数名。勿論、西宮の人も多いが、奈良、滋賀、兵庫県でも西の方からとはるばる駆けつけている人も多い。
友人が誘い合って、久しぶりの甲子園の感触を味わいつつ、旧交を温めているようだ。現役ではプラカードをもてなかった人も参加できるのがこのマスターズ甲子園。今年は星野監督との集合写真も撮れ「今日が、誕生日なんです(*^_^*)」と大喜びの人もいた。
久々のドキドキ感を味わい 改めて甲子園の大きさ・甲子園の持つ雰囲気を味わった人たちの高揚した笑顔がそこにあった。
こうして「イチニシの伝統」がさらに強くなるのだろう。
夏の高校野球の開会式は釘付けになります
皆さんに話しを聞いていると、その時代によって選考基準などもかなり違っているようだ。段々、プラカードをもつ人たちの希望者が多くなるとそれに伴って選考基準も厳しくなる。
「私は文化部でしたから、現役の時は持てなかったんですよ…。」と言う声もあちこちで聞こえた。浅谷会長を支える掛水さんは「たった一度、プラカードを持った縁で結婚された話もありますし、その後交流が続いている話もたくさんあります。
私自身もこれまで、そんな交流で支えていただいたことも多いですね。本当に、西宮市民の幸せですね
当時の記念の品は、アルバムの他は震災で実家と共に無くなったのが残念です。」昔のことを振り返りつつ、OG会として交流の場を続けようと頑張っている。
これまでも、記念大会の開会式には、OGたちが外野席に集ってきたようだ。
これからも、きっとこの伝統が引き継がれるのだろう。
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