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カラヤンの“自己愛”から現代日本人の心の問題を診る

夙川学院短期大学で基礎医学や児童心理学の講義をしつつ、このたび『カラヤンはなぜ目を閉じるのか~精神科医から診た“自己愛”』という本を出版された中広全延(なかひろ・まさのぶ)教授。素晴らしい景色が見渡せる大学の応接室で、本の内容や大学でのお仕事などについてお話を伺った。


夙川学院短期大学教授・精神科医  中広全延さん
1958年、大阪生まれ。10歳から西宮市在住。
大阪大学医学部卒業。医学博士。精神保健指定医。
現在、夙川学院短期大学・家政学科・学科長
著書に『カラヤンはなぜ目を閉じるのか~精神科医から診た“自己愛”』(新潮社)

音楽プラス医学エッセイ

 20世紀の偉大な指揮者、カラヤン。
その名は世界中にとどろき、まだレコードプレーヤーのない家も少なくなかった1950~60年代の日本の子供たちでさえ、カラヤンの名は知っていた。
そして、レコードからCD、さらにDVDの時代になった今も、カラヤンはクラシック界の売れ筋ナンバーワンである。

その
カラヤンの生誕100年にあたる今年、1冊の本が話題
を呼んでいる。題名は『カラヤンはなぜ目を閉じるのか~精神科医から診た“自己愛”』。音楽プラス医学エッセイという異色の本の著者が中広先生である。
「学術雑誌にカラヤンの症例についての学術論文を発表してきましたが、それらをベースにここ10年来の研究や構想をまとめた、
いわば集大成と言える本
です」


ジャンルを問わず音楽を愛し「音楽をよく聞く」という中広先生。研究の対象にカラヤンをとりあげたのはなぜだろう。
「やはりクラシック音楽家のなかでいちばん有名な人だからです。有名イコール偉大とは限らないのですが、
カラヤンの場合は、有名かつ偉大
なんです」
「いまクラシック音楽家がCDを出すのは当たり前ですが、カラヤンが登場してきた頃、ライブ録音はあっても、スタジオ録音というのは少なかった。でもカラヤンは、これからはその方向も重要だ、と先を読んでいた。カラヤンが目指した方向が、時代の方向になったわけです」
「カラヤンほどの知名度、集客力、売り上げが期待できる指揮者はもう出ないのではないでしょうか。でも、カラヤンには非常に
“嫌われ者”の面も
あったんです」


尊大で傲慢で華やかなカラヤン

坂を登りきった正面玄関

カラヤンは目を閉じたまま指揮をするのがトレードマークだった。とくに1970年代半ばの黄金期には、
指揮中ほとんど目を閉じていた
と言われる。中広先生は、病跡学という精神医学の手法で、そのカラヤンの指揮スタイルの謎に迫る。
「病跡学というのは、簡単に言えば、天才と狂気の関係を研究する学問です。つまり、カラヤンの精神内界と創造性との関連を追究しました」
中広先生は本の中で、米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル』にある「自己愛性人格障害の診断基準項目」をとりあげている。その9つの診断項目のうち、代表的な3つは次のようなものだ。
  • ・自己の重要性に関する誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)
  • ・過剰な賞賛を求める
  • ・共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない

これらの診断基準をカラヤンがどれだけ満たしているかを、広く知られているカラヤンのエピソードなどにより、中広先生は検討していく。
たとえば、「ヘルベルト・フォン・カラヤン」と、貴族出身であることを示す「フォン」を付けて名乗ったこと(パスポートの名には「フォン」が付いていなかったという)。自分のレコードがいつもベスト・セラーで、自分の演奏会のチケットがまっ先に売り切れるのを、よく自慢したこと。楽員に対して常に従順を要求したこと。経済人や政治家といった同時代の権力者と交際したこと。スポーツカーを乗り回し、自家用ジェット機を操縦し、50歳のとき18歳のディオール専属モデルと三度目の結婚をしたという華やかな私生活…。
カラヤンの尊大で傲慢な行動や態度
はいくらでも挙げられる。


掲載日:2008年08月01日

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