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西宮流 > Who’s Who > 能楽師・大倉流小鼓方 久田 陽春子さん

女性能楽師として、地域で伝統文化を継承する役目を担う  能楽師・大倉流小鼓方 久田 陽春子(やすこ)さん

小鼓を通じて「文化を伝える」ための活動を

オレンジ色の紐が「調べ」。締め方で流派が判別できる。

オレンジ色の紐が「調べ」。締め方で流派が判別できる。


馬の皮(手前)とサクラの木の胴(奥)でできている。皮は張り替えることができない。

馬の皮(手前)とサクラの木の胴(奥)でできている。皮は張り替えることができない。

小鼓は、「調べ」という紐の締め方が流派によって異なり、音にそれぞれ流派の個性が出る。さらに、調べ紐の握り方によって音の高低を変え、「ポ」「プ」「チ」「タ」と呼ばれる4つの音色を出す。湿気を好む小鼓は、日本の風土に適した楽器とされてきたが、その分乾燥に敏感なので、演奏中にも息を吹きかけたり、唾で湿気を与えるなど、細やかな調節が必要なのだ。

奥深いゆえに、魅力的だという小鼓の音。鼓を打つ人は皆、続ける限り音を追求していくのだという

素人がこの小鼓を叩いても簡単には音が出ないので、体験教室では、音が鳴りやすいプラスティック製の鼓を使う。しかし、「お稽古で来られる生徒さんには、プラスティック製の小鼓で練習せずに、稽古場に来て必ず本皮のものを使うようにお話しています。簡単に音が出てしまうことに慣れてしまってはいけないのと、何より、自分が触れる楽器のことを『たったひとつの大事な道具』と感じてほしいのです」と陽春子さん。単に楽器の使い方を教えるのではなく、伝統文化を伝える人間としての使命感を背負ったような話ぶりで続ける。

「一般に広く親しんでいただくために、カルチャーセンターなどでの講座は、色んな方に参加していただきやすく好評ですが、数回の講座で終わってしまうのではなく、その先にある、文化の奥深さまで味わっていただけたら本望です。あちらこちらでイベントを開催しても1回きりで終わってしまっては残念です。何事も継続するということが難しいのですが、文化の魅力を伝えるには、一番大切なことだと感じています」

能楽の文化は、演目の内容はもちろん、礼儀やあいさつなど、日常生活に直結する教えが多いもの。また、自分以外の演者のことを思いやり、互いの呼吸を感じとらなくてはならない。「今の社会生活において、能楽が教えてくれることは、大きいのではないかと思います。そして、先代が伝えてくれた楽器や道具とともに、感謝を添えて100年先に渡していきたいと願っています」

能楽という文化を伝えるべく、さまざまな工夫を凝らして公演、教室を行っている陽春子さん。夫の幸祐さんの謡と小鼓のコンビネーションも好評で、活動は多岐に渡っている。小、中、高校での出前授業や、サロンでの茶話会など、能楽についてのレクチャーやワークを取り入れたものは、能楽に初めてふれる人々に人気だそうだ。今年の1月には、舜一郎さんのアイデアで兵庫県立芸術文化センター(西宮市高松町)での、「囃子のみのコンサート」が開かれ、夫の寺澤幸祐さんとお子さんが出演した。

陽春子さんのお父様の舜一郎さんはアイデアマンで、「囃子の音楽としての可能性」を追求した活動を繰り広げている。
海外での公演多数、他ジャンルとのコラボレーションにも取り組む。9月に開催された大阪市立東洋陶磁美術館での「美術と能の響き~能サウンド・ミュージアムオブアート~ 能囃子「安宅」を聞く」など、話題を集めるイベントをプロデュースしている。


掲載日:2007年10月8日

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