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夙川の舞台で、伝統芸能 能の魅力を伝える  観世流 能楽師・シテ方 上田拓司さん

親として導けることはまだまだある

長女・絢音さんの初舞台時・瓦照苑にて

長女・絢音さんの初舞台時・瓦照苑にて

上田さんご自身も、4人の子どもたちの父親。子どもたちはお腹の中にいるときから謡を聞き、4人とも、上田さんや、そのお父様と同じく、2歳で初舞台を踏んだ。
そして、親子で舞台をともにする心境とは――。「舞台に上がっても、親は親。舞台の上でも、日常でも導くことが、ともに楽しむこと、ひとつのものをつくることで喜びを分かち合いたいと思っています。親として、皆がそれぞれの自分がやるべきことを皆それぞれに探し、一人前になってほしいという願いでいっぱいです。」

 親として、一つのことに一所懸命に取り込んでいる姿を見せることを役目として、子どもたちの成長を見守る上田さん。現代の教育について、懸念する思いも伺った。
 「子どもは子ども、親は親と考え、教育を押し付けと捉える人が多くなっている。大人として子どもが大きな心に育つために、教えられることは、まだまだあるはずです。」
 家庭や学校での教育面に、能に限らず、文化面がもっと参入し、役割を果たすことがあるのだと感じる。そんな思いの上田さんだからこそ、子どもとお稽古に訪ねる人々が多いのだろう。

社会を幸せにしたい願い、一歩目は西宮から

2階のお稽古場からは夙川の松並木が美しい。

2階のお稽古場からは夙川の松並木が美しい。

ご自身は子ども時代、神戸市長田区で育ち、西宮、とくに夙川近辺は親戚の家があり馴染みがある場所。阪神・淡路大震災で長田区の家が倒壊してしまい、その後の住まい兼稽古場として、この地が見つかった。伝統芸能が盛んなこの地に移ったのも縁あってこそ。上田さんの祖父、上田隆一さんは、1950年に西宮北口に建てられた「日芸会館」の設立に尽力された方だという。
「自分たちが心地よく住んでいる町だから、『まず西宮、せめて西宮』という思いがあります。我が子たちに、『どうして能をやっているのか』という話をするとき、自分が舞台に出ると、それを見て元気になる人がいたり、心が和んだりするように願っていることを話します。
まずは、自分がいるこの場所から発信する。そして、少しでも広く伝えていき、社会全体が幸せになるように、豊かになるようにしていきたい、と。」
ところどころに曲の内容を織り交ぜ、能を演じることを通して学んでこられたご自身の哲学を、惜しみなく伝えてくださる上田さん。能への愛情、そして、自宅舞台「瓦照苑」の地域への開放など、いろいろな世代の人に能楽にふれてもらうためのメッセージを強く感じた。
                           取材/沖 知美
掲載日:2007年8月9日

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