「工業用のプレートフィン熱交換器分野において、自社設計による製造技術及びコンパクト且つ高効率な製品開発」
創業51年、前身の時代から数えると100年以上に渡り、主に蒸気を熱源とした熱交換器を設 計・製作・販売を行っています。また、各種装置においての温度、湿度及び圧力制御技術を 有しています。 エロフィンヒーターを最初に製作した専業メーカーとして1世紀を超える歴史からくる技術 と実績は、工業用ヒーターを主体とする熱交換器に反映されています。また、高品質、納期 厳守を徹底化する為の社内一貫製作へのこだわりと、従来比の1.5倍の熱伝導率を誇るアル ミフィンを生み出す開発力が同社の強みです。高効率アルミフィンを使用したプレート式熱 交換器『Bee』は環境・省エネ分野で高い評価を受け、「関西ものづくり新撰2015」に選 定されています。
井上ヒーターの前身の井上金属工業株式会社でエロフィンヒーターの特許を取られたのは、 井上雅晴社長のおじいさんでなんと今から100年以上前に遡る。 その後1966年(昭和41年)に分離独立し、各種ヒーター、クーラー、熱交換器類の専門メ ーカーとして、井上ヒーター株式会社が設立され大阪市都島区で製造を開始した。 「都島にあったカネボウや日本製紙が次々と移転し、跡地がマンションに変わっていきましたので弊社も移転先を探すことになりました。」と井上社長。
元々、夙川がご実家の「宮っこ」ということもあって、ここ西宮浜に移転されたのが2005年 (平成17年)9月。
「西宮浜って、とてもいい場所ですよね。工場エリアと住宅エリア、そして学校などが共存 していて交通の便もよく、とてもいい環境だと思います。弊社は騒音とか臭いとか近隣を気 にしないといけない工場ではないので、純然たる工場団地という場所でなく、こういう場所 を探していました。」 夙川に住んでいた子供のころは、香櫨園浜にあったマリンプールで泳いだ思い出もあるとい う。
「今はしっかり囲われてしまっている砲台ですが、私がマリンプールに来ていたころは 普通に中に入れて遊んでいました。それが何なのかも分からないままにね・・・(笑)」
エロフィンヒーターを最初に製作した専業メーカーとして、数々の大手の取引先がある実績 をもつ井上ヒーターは主に工業用ヒーターを主体とする熱交換器を製造している。
※エロフィンヒーターとは、主として空気等(ガス体)の加熱を目的としたヒーターで空 調器、乾燥設備、乾燥機器等に組み込まれ使用されている。>
私たちの身近なもので言うとクーラーの内部に密集して並んでいるフィンと形状などは似て いるが、要求される精度や精密さでは雲泥の差があり、井上ヒーターは過酷な条件下の工業 用のヒーターのための熱交換器の部分を支えてきた。
これまでも社内一環製作での従来比2倍の熱伝導率を誇るアルミフィンのプレート式熱交換 器は高い評価を受けてきたが、様々な溶剤や熱、粉塵、有害物質などの過酷な条件にさらさ れる工業用ヒーターや食品・医療関係の分野ではさらに高性能のクリーン度が要求され、こ れまでは使われてこなかったステンレス製のフィンが必要となってきていた。
ステンレス製となると熱伝導率が悪く、装置も大掛かりになり、コストもかかる熱交換器だ ったので開発は大変だった。しかし東京大学の鹿園教授との共同開発で、従来比1.8倍とい う高性能フィンを実現させた。
最近の傾向は短納期の受注が多いという。
それに応えるためにも能力が向上した商品開発や 生産性の効率UPが必要となる。一度納品すると30年以上は使われる製品なので、新商品 の開発にはスピード感が求められる。
次の開発に向けてのデータをとりながらの検証実験の繰り返しの一方で、受注の商品の製造 に力を入れる。工場では少数精鋭の社員が、製品の出荷作業に追われていた。
近年、電気自動車の増加に伴ってリチウムイオン電池メーカーとの取引も多くなっていると いう。『地域社会に優しく、クリーンで地球を汚さない企業に・・・』と工場の屋上は全面 ソーラーパネルを設置し、社用車は電気自動車。そのために敷地内の一角にはEVステーシ ョンが作られている。
「資源のない日本は、やはり丁寧なモノづくりで生きていく必要があると思います。緑の多 いこの西宮で働けるのは、私にとっても社員にとっても考える力を与えてくれるような気が しています。
子供の頃によく遊んだ浜の近くに工場を持つことになるとは思ってもいません でしたが、堀江健一さんが小さなヨットで危険を覚悟に太平洋横断に出かけたように、井上 ヒーターも小さな会社ですが、冒険心を忘れずに新しいことにチャレンジしていきたいと思 っています。」