微小静電容量測定技術(微小静電容量計の開発)
常識に挑戦して新技術を開発し、社会に有意義な機器を提供しています。静電容量の測定では、配線等による影響が避けられず、特に微小容量になると測定の度に数値が変わることも珍しくありません。「微小静電容量計」は、新方式による容量検出回路の採用と、測定時の配線の影響をなくす方法の確立により、0.01fF(フェムトファラッド)の、驚異的ともいえる微小容量の安定的な測定を可能にしました。半導体デバイス内部の静電容量を計測して不良品を早い段階で検知し、生産性の向上やコスト削減に貢献しています。
「微小静電容量」・・・何だか難しい言葉の受賞理由の書かれた書類を持って、176号線沿いの山の中とも言える場所にある会社を訪ねた。
「ICの中のトランジスタがいろんな計算をしてくれるのですが、今では大変な高速化時代になっています。ところが
この高速化を阻害しているのが“浮遊静電容量”
なんですね。
勿論、ミクロンの世界です。それを測るツールとしての装置を開発したんです。」理系の頭でない私にも理解できるようにと、中野浩一社長が言葉を選びながら説明してくださった。
開発した・・・という言葉に驚きながら「その機械がなかったときには、どうして測っていたのですか?」
と尋ねると、「これまでは、推測していたんですよ・・・」となんでもない事のように中野社長。
これまでは外国の会社の製品が世界標準になっていたのだが、それが使いにくかったんだという。勿論、新製品は特許を取られている。現在、微少容量では10のマイナス16乗を測っていて、
17乗に挑戦中
らしい。
これまで、東芝・三菱・オムロン・ウシオ電機・・・と、様々な企業の依頼で品質検査用の測定器の開発に携わってこられた。
「勿論、お客様の要望で様々な測定機器を作ってきましたが、やはり自分たちで開発し自分たちで作って売っていかなければ会社が大きくなれません。
今回の“微小静電容量計” や“パーティクルセンサ”などがそれです。」
例えば、ICチップを作る段階では、必ず洗わないといけない。
昔は薬品で洗っていたのだが、環境の問題等で薬品が使えなくなり、純水で洗うが、この純水には僅かなゴミも混ざってはいけない。
ゴミが混ざるとそれだけ歩留まりが悪くなる。この水中の微小なゴミをパーティクルという。0.1ミクロンを100ナノといい、10のマイナス7乗の世界。
「洗浄現場では、これまでも大きいものはあったんです。10センチ角という、
インラインで使えるものになった
ということが画期的なんです。」続けて、その製品の概要を教えていただいたが、私の貧困な頭ではついていけない。
ゴミがあったらレーザー光がそれに当たって回折する。
その回折を利用してゴミを測るということらしい。やはりいろいろな作業の中で
「なぜ??」が開発につながっていく
のだそうだ。
新しい製品の開発には、私たちに分からない所で苦労があるのだと中野社長が教えてくれた。
「これまでになかった発想や製品ですから、例えばJISで否定されていたり、担当省庁でも理解されなかったり・・・って言うこともあるんです。」
お話を伺った後は、本当に様々なものがおいてある社内を案内していただいた。開発実験中のものが山ほどある。
「これは蛍光灯の節電装置ですね。こちらはトランジスタやDVDの検査器、これはパイプの溶接部探傷のためのもの・・・。」
作る人ひとり一人が工夫しないとダメ
なんだという言葉を実感しながら社長の後を歩いた。
今一番頭の痛い問題が、会社の移転問題だという。現在の場所は道路の拡幅工事で立ち退きになるが、行き先がなかなか決まらないのだという。
「浜のほうになら用地があるようなんですが、うちのような精密機械を扱うには海沿いは潮風の影響が困るのです・・・。」西宮にあって欲しい会社の一つでもあるので、何とか解決する日が来ることを願いつつおいとました。
