西宮流 > にしのみや一品入魂ものがたり > 大澤本家酒造「寶娘」[1]



店先に立つと、奥からは圧倒的な香しい日本酒のかおりが漂ってくる。
「えらい古い木造の蔵ですね~」蔵に入ったゆかやんの第一声。天上が高く少し薄暗い木造の蔵は、頭の上の太い梁のあたりから何かに見られている気がする。この蔵に住み着いている酒造りの麹菌たちが、私たち侵入者を見ているのかもしれない。
「この蔵は、戦後に建てた昭和の木造蔵です。もう皆さんもご存知のように、あの大震災では酒蔵が大きな被害を受けました。この小さな木造蔵が倒壊しなかったのは本当に奇跡です。
守って頂けたんだと思っています。」当時中学二年生だったという大澤一慶さんが話す。
「あの時間は、酒造りの職人にとっては一仕事終えて、朝ご飯にしようかという時間だったんです。」
その頃社長だった一慶さんのおじいさんとお父さんと一緒に、自宅からここまで駆けつけたという。
「もう本当に地獄絵図でした。私は戦争は知りませんが、こんな光景だったんだろうな・・・と思いましたね。同業者の蔵があちこちで無惨な姿になっていました。」
「あの震災があったから、灘五郷ではこのような木造蔵がほとんど見かけられなくなりました。
残ったものとして、この木造蔵を大切にしていきたいと思っています。」
最盛期なら蒸し米の大きな釜から湯気が上がり、麹米を作るための放冷機が置いてある辺りでの立ち話から、タンクが並んでいる作業場(中二階)へと年代を感じる木の階段を上がっていった。
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