小田歯科医院院長小田泰史さん[Who’s who 西宮の人インタビュー]

なでしこジャパンの中心メンバーを輩出しているINAC神戸レオネッサの選手達をスポーツ歯学という面からサポートされている歯医者さんが西宮におられるという事を耳にし、夙川にある小田歯科へお邪魔した。

お約束の時間の少し前に着き、待ち合いで待たせていただいた。暖かい色彩のスペースの奥には、みごとな桜が活けてあった。

聞けば去年からの企画だという立派な桜には「啓翁桜」というネームプレートがあり、その下には手書きで「啓子さんって呼んでね！！」と書いてあった。
スタッフの心遣いが感じられる。可愛いぬいぐるみがニコニコ座ってくれている待合に居ると、午前中のお仕事を終えられたばかりの小田院長が奥から出てこられた。

大きい目がとても印象的な先生。「歯医者とか医者なんて、普通は誰も行きたくないところなんですよ。それが当たり前だと思います。歯科のキーンと言う音は嫌いだし、治療は痛いし・・・そんな行きたくない場所だから、患者さんが少しでもストレスを感じないようにと工夫はしています。」

話し始めたら一生懸命に話される先生のお顔を見ていて、患者さんへの治療もきっと力いっぱいなんだろうなと感じた。
「僕は、仕事して楽しいと思ったことは無いです。ありったけの力を出して治療しますので、一日が終ったらもうフラフラ・・・」
「患者さんを幸せに出来るなんて思ってないけど、寄り添う事はできると思ってます。治療中だけでなく、例えば日常会話の中にも出てきて、えっ、先生、そんなとこに居たん？？みたいなね～～（笑）」
会話の中のたとえ話もユニークで、次々に言葉が飛び出してくるのが楽しい。

「患者さんを巻き込んで『ここはなんかちょっと違うな！』と思わせて、情報発信をしていきたいと思っています。」という先生は、ここに開業して3月１日でちょうど10年になる。
恒例になった内輪の医院の誕生日パーティは、同時に婦長さんのバースデーパーティだそうだ。今年もそこにはINACの選手達も駆けつけてくれるという。

そんな選手達との交流が始まったのは、ご自身がおっしゃる『人生の師匠』の影響で噛み合わせの研究をし始めたことから。
「体の左右のバランスを整えると、人間は一番力が発揮できるものなんです。」ためしに…と、先生の言われるままに体験してみた。
全く同じ動作をしているのに、ほんの薄いガーゼを片方の奥歯で噛んだだけで、体に入る力の違いを実感した。

「人間の体って、本当に微妙なんです。ガーゼ一枚と言うかみ合わせの狂いがこうして体全体に影響するんです。人間の体はなかなか左右対称…というわけにはいきませんが、体や腰の調整と同じくらい、歯のかみ合わせも重要になるんです。」
極限まで鍛え上げるアスリートを、先生は歯のかみ合わせの調整で支える。

患者さんに寄り添いたい・・・と土日も診療をされている。
「人間って、気が緩む週末に免疫力が下がるものなんです。その時に医者が休むなんてあかんでしょ〜（笑）」患者としては、とても心強い。

「患者さんに無理強いはしません。でもね、もう二十数年も歯医者をしていると、将来ここがこうなる・・・って言うのは分かるんです。１本の虫歯治療だけに来てくださった方にも、お口の中の全てをチェックさせていただきます。もちろんかみ合わせも。」
こうして、その時の状態を患者さんにお話して、患者さんが選ぶ治療に入っていく。

先生ひとり一人が、一人の患者さんにかかりっきりで治療し、歯科衛生士の肩書きを持つ小池智恵婦長さんも専用の診療台を持ち、口腔ケアに当たる。
「歯医者なんて儲からないんですよ～。こうして差別化を図らないとアカンのですわ～。」
少し乱暴にも聞こえる言い方で「すっごいきつい仕事ですよ！！」といいながら、「でもね～、本当は好きなんかな～～」少しトーンを落として、自分の心に聞くように話された様子が心に残った。

普通は行きたくない場所だから、出来るだけ雰囲気を和らげようという院長の思いで、院内には様々な工夫が凝らされている。暖色系を使った待合の雰囲気作りに始まり、スタッフのユニホームの色もこだわる。そして、なんと子ども向けには、院長先生がコスプレで治療することもあるという。
「強烈な個性の先生ですからね。。。。」婦長さんが笑う。強い信頼関係のお二人のツーショットを取材の最後に撮らせていただいた。